「いやー、笑いまくった」龍三と七人の子分たち Hiroki Abeさんの映画レビュー(感想・評価)
いやー、笑いまくった
久しぶりの北野映画、前作アウトレイジは正直、そんなに良いとは思わなかったので不安ながらも観てきました。まずは上映前、場内を見渡すと観客の年齢層がかなり高い。じじ様、ばば様がほとんどというなんとも不思議な空間から映画はスタートしていきます。
今作はコメディらしい位の予備知識でしたので、どんな物語なのか?そして、はっきり言って日本では成立しにくいコメディというジャンル、果たしてちゃんと笑えるのか?不安と期待が入り混じりながら物語はスタートします。冒頭、龍三と息子家族の会話劇からスタート、あらら、やっぱりこっちのノリにしちゃったんだと残念な気持ちになりました。内容は割愛しますが北野映画っぽい会話劇に画面に浮かび上がるテロップ的文字と映画はそれやったらスベるじゃないかと独りごちてしまう。このまま、このノリで物語が進むなら相当覚悟しなければいけないなんてことも頭によぎりました。
しかし、しかしである。なんと本作、予想を良い意味で裏切り、ここから、ぐっとギアチェンジして面白くなっていく。龍三と子分たちのキャラクターもたちまくってたし、リアリテイとフィクションのバランスもよかったし、あっという間の120分だった。秀逸なのは、物語でいうところの伏線と回収、笑いでいうところのフリとオチがちゃんと効いているところ。今迄の北野映画だったら、その場のよしやってみよう的笑いが多かったが、本作はフリが効いているのでストーリーを破綻させないながらもちゃんと笑えるというコメディ映画の最も大事な要素を成立させている。後、高尚な皮肉じゃなく、ビートたけしらしい下世話な下町的皮肉が効いているのも素晴らしかった。ご遺体を文字通りボコボコにするところなんて、本気で腹を抱えて笑った。
というわけで、かなりの高評価です。是非とも映画館で思いっきり声を出して笑ってください。