「ジジイの活躍が痛快」龍三と七人の子分たち えのきちさんの映画レビュー(感想・評価)
ジジイの活躍が痛快
『龍三と七人の子分たち』を試写会にて鑑賞。
北野武監督の最新作。
元ヤクザ組長ですでに引退し、息子と同居生活を送っていた龍三(藤竜也)は若手詐欺集団によるオレオレ詐欺に引っかかってしまう。若手に勝手な事はさせないと昔の仲間を呼び寄せ、世直しに立ち上がる。
結論から言うと、実に楽しい作品であった。
北野武監督作品と言うより、ビートたけし監督作品と言った方がしっくりくるほどよく出来たコメディである。
今までの北野作品とは異なり、暴力は控えめだし、突然踊り出す事もない。ある意味オーソドックスな作風ではあるが、セリフや間が絶妙で全く飽きる事なく最後まで楽しめる。
何よりジジイ達が良い。
下手な若者よりも活き活きと描かれた彼らは老い先が短い事から怖いものなど何もない。
昭和感満載の彼らが繰り広げる現在社会との微妙なズレが笑いを産み、何気ない行動や一言にも一切の手抜きがなく、常にユーモアセンスが光っている。
個人的にはコメディ作品では劇中で死者を出すのは御法度だと考えているのだが、今作に対しては全く当てはまらない。それすら笑いにし、尚且つ不謹慎さを全く感じさせないあたりは見事と言うほかない。
北野作品はアクが強く一般受けしないイメージがあるが、今作は誰でも楽しむ事ができるので、北野監督作品が苦手な方でも大丈夫。
先入観を持たずに鑑賞していただきたい作品である。
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