「どんな組織に属していようとも、いかに心優しい一人の人間として判断出来るか…」杉原千畝　スギハラチウネ　KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー（感想・評価）

前々から機会があるにも関わらず
見逃していた作品だが、
杉原千畝に関するTV番組を
見たことを切っ掛けにようやくの鑑賞。
これまでも多くの関連映画を観てきたが、
この作品もある意味“アウシュビッツ”物
と言えるのかも知れない、
その地獄の収容所に送られたかも知れない
たくさんの命を救った物語なので。

冒頭のユダヤ人が外務省を訪れたシーンで、
単に戦前のリトアニアの領事官の人と
言えばいいだけのことを
そうしなかった演出や、
ドイツのソ連侵攻に伴い
ドイツの支援を受けられない日本は
米国に敗れるとの杉原の言及など、
少し演出過多に感じる箇所があったものの、
前半の、
妻やオランダ領事代理のアドバイスや、
満州から関係の続くロシア人女性らの刺激に
よっての杉原の成長譚的エピソードや、
査証発行に伴う幾つかのシーンには
幾度も感動を覚えた。

そんな杉原の生き様については、
運転手として雇われたポーランド人の
別れ際の言葉、
｢あなたは最低の外交官だ。
でも最高の友人でした｣がある意味
よく良い当てているような気がした。
どんな組織に属していようとも、
最後の最後に、
いかに心優しい一人の人間として
判断出来るかを伝えて余りある杉原の生き様
を見せて頂いたような気がする。

それにしても、
シンドラーや杉原千畝らによって
たくさんの命を救われたはずのユダヤ人
だと思うのだが、
現在、ガザ地区で虐殺を行っていること
について、イスラエル国民はどう感じているのだろうと思うと共に、
この映画の時代と同じように、
大国に蹂躙される小国という
現在の似た状況には懸念を覚えるばかりだ。