劇場公開日 2015年12月5日

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「改めて勇気ある決断に大感動!そして戦後日本外交の大きな損失。」杉原千畝 スギハラチウネ ななまがりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5改めて勇気ある決断に大感動!そして戦後日本外交の大きな損失。

2015年12月13日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

杉原千畝さんを初めて知ったのは、もうかなり前、関口宏さんの番組「知ってるつもり」。日本版シンドラーと紹介され、なんという勇気ある決断に、こんな日本人がいたのかと驚きと感動したのを今も覚えている。

外国の切手の肖像画に使われたり、外国のある通りの名前に使われた日本人はいるのだろうか、杉原さん以外にあまり聞いたことがない。

杉原千畝さんを演じる唐沢寿明さんが素晴らしかった。

また、あの再開のシーンは、目頭が熱くなってしまった。

ユダヤ難民を助ける上で、杉原さんが、最大のキーマンであるのは言うまでもないのだが、尺こそ短いが、本編でも登場する
二階堂智さん演じるウラジオストク総領事代理の根井三郎さんと、濱田岳さん演じる大迫辰雄さんの二人の日本人や、本土に着いてからも、杉原さんが発給したビザが引き継がれたことも忘れてはならない。

根井総領事代理が口ずさむ。

「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして、報いを求めぬよう」

後藤新平さんが制定した、杉原さん、根井さんの出身校でもあるハルピン学院のモットー。
同じ出身校の二人が・・・、なんという偶然なのだろうかと感動させられた。

根井さんにしてみても、直接、言葉でのやりとりがなくとも、旧知の杉原さんが発給したビザが、どういうものか、または、どういう思いなのか、全てを物語っていたのだろう。彼が乗船許可を出すのも、これまた、勇気ある決断だと思う。

また、本編を拝見して驚かされたのが、
杉原さんのインテリジェンス・オフィサーとしての情報収集能力と分析力。
確か、小日向文世さん演じるドイツ大使とのあるやりとりで、ことごとく、日本のこれからの起こるであろう出来事をズバリ推察していた所など、極めて優秀だったことが伺える。

こうした現場の優秀な外交官を持ちながら、処理、判断できない軍部による政府が、当時の最大の不幸だったかもしれない。

日本をより良い国にしたいと思う気持ちは、戦中だけでなく、戦後もあったと思う。だが、形は外務省を依願退職のようだが、本編でも助かったユダヤ人が、外務省に杉原さんを訪ねてきたときの役人の対応ぶりでも分かるとおり、ビザ発給の責任をとって辞めさせられたに違いない。あの冷遇ぶりは、人として腹立たしい限りだが、杉原さんのような外交官を失ったことは、日本外交の大きな損失ではなかろうか。
何故ならば、彼の優秀な外交能力は、占領された今後の日本の行く末、東西冷戦時の重要な外交交渉などに、遺憾なく発揮されたのでないかと思うからだ。

タラレバの仮定のことを言っても始まらないのだが・・、本編とは関係ない所ではあるが、なんか残念な気持ちになってしまったのも事実である。

ななまがり