「人の数だけ物語がある」ラブストーリーズ エリナーの愛情 シャイニングチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
人の数だけ物語がある
「コナーの涙」を見た2週間後に鑑賞。
2本を比較してどうこう考えたほうが楽しめるので
もうちょっと覚えてるうちに見に行けば良かったなと後悔。
一組のカップルの喪失と再生のお話なのに
男女でかなり印象が違って驚きました。
ラブストーリーだけど
コナーの側は
『 男女の愛 → 夫婦愛 → 家族愛 』
で
エリナーの側は
『 家族愛 → 夫婦愛 → 男女の愛 』
の順で記憶のフォーカスが動いているように見えて
同じ時間を過ごしているのに
心の時間は逆行しているというかなんというか。
その一方で
男女の感性に性差を感じ過ぎて鼻についたのも確かなのですが
マカボイさん曰くそれも意図して制作されたとのこと。
同じシーンでもセリフが違ったり
照明もアングルも違ったり。
車の中で良い雰囲気になるシーンでは
男性側だとロマンチックなのに
女性側だと妻として慰めるついでに…
的な印象がちょっと面白かったし。
2人とも重要なことは自分が言っている、
と思っているのに
I love you. ↔ I know.
のスターウォーズなやり取りは
自分が返したと思っていて
夫婦の絆を感じてジーンときたし。
監督のインタビューを読んだら人の記憶がいかに曖昧で
主観的であるかを表現したかった
的なことを仰っていて唸らされました。
エリナーが子供を思い返すシーンは今もこれ書きながら
泣きそうになるくらい心に迫ります。
考えてみると私の場合は
「コナーの涙」でエリナーの
「笑っているのは思い出せるのに子供の顔が思い出せない」
というセリフから彼女の記憶を想像したうえで
あの
明るいリビングを抜けて子供にカメラが近づくと
ピントががぼやけて何も見えない、
という一見なんともないけど実は
かなりキッツイ映像を見てるからなんですね。
つまり客観的な立場から彼女の記憶を想像した後で
別の映画で
主観的な映像でそれを疑似体験したことになる。
こんなに不思議で悲しい体験を観客にさせるとは
いやはや本当にこの映画凄いなと。
恐らく逆の順で見た方は私とは違った箇所とかで
不思議な体験をしているのでは?
と思います。
あと、
監督がインタビューで子供が死ぬシーンを入れなかったのは
冒険だったけど必要な決断だった的なことを仰っていましたが
大正解だと思います。
入ってたら大層な鬱映画になっていたと思う。
フィクションでも嫌だしずるいとも思うので
死を扱う映画は苦手なのですが
そこを強調し過ぎること無く
描きたいものに焦点を絞った勇気も素晴らしい。
「コナーの涙」のほうが映画としては断然好みなのですが
「エリナーの愛情」のほうが点数が高いのは
2本合わせて見た重みと発見があったから。
一見地味だけど実はかなり深い意欲作!
凄く良い映画でした!