「大切なものは簡単に壊れてしまう」ラブストーリーズ エリナーの愛情 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
大切なものは簡単に壊れてしまう
まず、本作を観る前にコナー編を観たわけだけど、時間軸的にもそれで良かった気がする。
コナー編のレビューは旦那が担当していて、男性の目線で二人の物語を読み解いたあたり、本当に考えてることが違うんだなと思う。
邦題が「ラブストーリーズ」となっているけど、原題は直訳すると「エリナーの失踪」(disappearance of eleanor rigby)。
だから、どちらかと言うとエリナーがコナーの前から姿を消した理由を探る物語なんだよね。
そういう意味でもコナーの物語で消化不良だったエリナーの行動をじっくり考えられたし、2回目を観るような感覚でストーリーに入っていけたのは大きかった。
やっぱり私は女だから、エリナーの気持ちに寄り添って観ている事になるのかな?
男と女とで、考え方や出来事の捉え方が全然違う、ということが同じシーンの微妙な差異で表現されてるところが面白い。
二人は子どもを亡くした夫婦なわけだけど、エリナー的にはコナーが目に入るたび、亡くした息子を思い出して、辛さが蘇ってくる。多分辛さを他の事で紛らわしているコナーに、ホッとする気持ちと不満とが入り混じって苦しくなる。
それを誤魔化すために選んだ道が、コナーを見なくて済む、コナーの前から消える、コナーを「なかったことにする」道なんじゃないか、と思う。
出会わなかったら歩んでいたかもしれない、もう一つの人生。もう一つの私。
その一方で、子どもを思い出すような「何か」がある度に、その奥にあるコナーを想う気持ちが胸いっぱいに広がってしまう。
こんなに複雑怪奇な女心を、説明も少なく行動や表情で魅せてくるんだから、監督も演じたジェシカ・チャスティンもすごい。
物語の中でエリナーを導いているのは、色々な形の親子関係なように思う。この辺り、やっぱり女性らしいな。
直接的な刺激や助言に影響されるより、小さな事の積み重ねが大きな感情を作っていく傾向があるように思うのね。私にもそういう部分はある。
で、そういう色んな欠片の積み重ねこそが、逃れられない「自分」なのだと受け止めたとき、大切なものは何なのか?を受け入れることが出来たんじゃないかな。
どうせ観るなら、是非2作品とも観て欲しい。
二人の涙と愛情が、細やかでとても美しい。