「森で迷子にならない為に[誤記修正]」イントゥ・ザ・ウッズ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
森で迷子にならない為に[誤記修正]
ネタバレ有りで書いてはいるが、ミュージカルがキライな方には
無論この映画は100%オススメできないし、
お城の舞踏会や巨人の屋敷といった昔話の名シーンを
いっぺんに楽しみたい!という方にもオススメできない。
だが、ミュージカル好きな方には断然オススメ。
慣れ親しんできたおとぎ話にどんなヒネリが加わるか?
という興味をお持ちの方も楽しめると思う。
で、僕の場合はけっこう楽しんで観られました。
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「I wish…」という台詞で様々な場所にいるキャラ達が
一斉にシンクロする冒頭の流れにはワクワク。
音楽に合わせたリズミカルな会話も耳に楽しい。
森と魔女を柱として、有名童話のキャラ達が
おかしな所でリンクする、ヒネくれた展開も面白い。
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メリル・ストリープは豪華キャストの中でも流石の存在感。
歌声もパワフルな上、演じててすごーく楽しそう。
溺愛するあまり娘に見棄てられる親の哀しみも胸に迫る。
シンデレラ役のアナ・ケンドリック
(修正:×ケンドリクス→○ケンドリック。
何故に複数形にしたんだ自分)の出演作は
何作か観ていたものの、歌唱センスの高さに吃驚。
夢見るばかりでないシビアで現代的な味付けも好みだ。
他にも、パン屋夫婦の絆には素直に泣けるし、なぜか川辺で
バッと胸元を開く(笑)イケメン王子2人は妙に笑えた。
『チャーリー・モルデカイ』がイマイチだったジョニデも、
今回は短い出番ながらも怪しさ満点で良い。
ワオーン!と月に吠えるシーンとかグッドよ、グッド。
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だが、イマイチなキャラもいる。
パン屋の妹という設定を丸投げして退場したラプンツェル
(と健気な王子)にはもっと見せ場が欲しかった。
前半の行動が図々し過ぎる赤ずきんにもイラッとくる。
しかし、そんな2人が霞んでみえるほどに
どうかしてるぜと思うキャラは、ジャックだ。
女の巨人に仲良くしてもらったのに金品を盗み、
怒った男の巨人を殺し、挙げ句は追っ掛けてきた
女の巨人に謝罪するどころか投石して殺害……
……いや、いやいやいや、ジャックよ、
お前さん、ゲスの極みか。
ワイドショーのトップで取り上げられるレベルだよ。
日本なら少年法改正を議論するレベルの犯行だよお前。
その周りも、直前で「良い人かも」と言ってた巨人を
容赦なく退治するのはどうなんだ。
主人公たちはみんな不平不満をぶちまけているが――
実際パン屋夫婦やシンデレラは苦労人だとは思うが――
この映画で一番不幸なのはあの巨人だ。あんまりである。
もう少し愛のある結末は思い付かなかったのか作り手よ。
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しかしながら、過ぎたるは及ばざるが如し。
巨人の最期については遺憾だが、それでも
この映画の結末に心を動かされたのも事実。
(ジャックは死んでも勘定に入れたくないが)
パン屋の夫婦、シンデレラ、そして魔女は苦悩していた。
追い求めたものと現実とのギャップに苦しんだり、
幸福を追い求めるあまりに周囲を不幸にしてしまったり。
人間は一心不乱に理想を追い求めて失敗する事がある。
そうして失ったものの大きさにいざ気付いても、
大抵の場合は取り返しがつかないことになっている。
そんな過ちを繰り返さない為にはどうすればいい?
失敗を子ども達に語り継いでいくことだ。
古来から語り継がれてきた物語は先祖からの教訓であり、
子孫が同じ過ちで苦しまないようにと願う愛情だ。
森の中で可愛い我が子が迷わぬよう立てられた道標だ。
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『物語』のそんな側面を垣間見せてくれる点が、
僕が本作を気に入っている一番の理由。
前述通りミュージカルとしても楽しめたし、
ステキなキャストも多かった。
という訳で、観て損ナシの3.5判定!
<2015.03.15鑑賞>
お久しぶりです。
相変わらず読み応えのあるレビューを、
堪能させてもらっております。
最近どうも「キリスト教」的なるモノに対して、
拒絶反応が激しくなって来てまして、
ついこの前見た映画でも「ファミリー」について、
どうしても感情移入が出来ずにいます。
ファミリーのためなら原爆投下も正当化しちゃう、
今でもそういう発想を持ってることが脳裏に浮かび、
やっぱりどこかで思考停止してるんだろうなって。
例えばベルイマンの映画の題名「沈黙」の持つ意味だとか、
そんなことを今更ながら反芻したりしております。
ところで全然話が変わりますが(苦笑)、
「ROOM 237」はご覧になりましたか?