「愚か者への人間讃歌」イントゥ・ザ・ウッズ だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
愚か者への人間讃歌
ソンドハイムのブロードウェイミュージカルを、映画化ということで前々から期待してましたが、あれあれ?評判わるい…?大丈夫か?と、ソワソワして観ました。
で、この評判の悪さは音楽もお話も、難しいからだなと思いました。
すごく素敵な音楽だけど、わかりやすくキラキラしてないし、わかりやすいバラードないし、聞きごたえあるけどとっつきにくいかもしれませんね。
おとき話に現代的な皮肉を踏まえた新解釈を、みたいなことを聞くと、「魔法にかけられて」を思い起こしてしまうかもですね。ディズニーが製作してるし、その路線を楽しみにして観ると、面白くなかった!となるのは仕方がないかも、と思いました。
舞台版も見てみたいです。
お話は、中だるみも少し感じましたが、楽しく見られました。飽きた観客のスマホの灯りが結構気になり、集中できなかった部分もあります。
ラプンツェルが影薄いですね。アホ弟王子といちゃついたのが魔女にばれて髪の毛切られて支配する母を罵倒して独立しましたね。
アホ王子兄弟のデュエットは笑いました。シンデレラが毎晩逃げたしたのは王子がアホだからちゃうんかな?と思ってました。
そこはシンデレラの方もずるいこと考えてたのでお互い様ですが。そら王子やからって、おうて踊ってはい!ハッピリーエバーアフター❤️なんてありえるかい!ってゆう話ですもんね。
登場人物はみんなバカで利己的で因果応報な窮地に陥ります。要はお馴染みのおとぎ話の登場人物を、バカで利己的なよくいる人間として描き、愚かさから学べという事を描いているのだと思います。
ラストの2曲くらいでその辺りのメッセージが立ち上がってきます。
人は何度も間違う、親も間違う、だから行いは自分で決めるしかないのよと言ってました。
子供達は大人を見ている、とも歌っていました。
ただ、そのメッセージが強いアクセントをつけて出てくるのではなく、終盤にわりとさらっと出てくるので、すでに字幕に疲れたりすると、気づかないかもなーとおもいました。
ミュージカルらしらを追求しているので、映画的見易さは二の次になったのでしょう。みなさん見やすさに定評のある方のディズニー映画が大好きですから。
私はミュージカルを忠実に!を支持しますが。
パン屋は妻がいないと何もできない癖に、一人でやりたがるし、王子は男前だけのアホやし(かわいいけど)、ジャックもアホやし、シンデレラはこすい駆け引きしよるし、パン屋の妻はアホ王子の色気にあてられるし、魔女は娘依存の毒親やし!
魔女が若さと美を取り戻してから魔法を失い、ヤケクソになって残りの豆を撒いて、ぎゃー風が!!から、蟻地獄に落ちて溶けてしまうのは、いみわからん!ってなりました。魔女のミッドナイトなんとかって歌、良かったのに!
話があちゃこちゃいって置いていかれたり、逆にダレる感じがするのは、少しき気になりました。
童話のエピソードも、原本に忠実な本当は残酷なグリム童話集的要素があり、良かったです。足を切って靴を履くとか。昔流行ったのを思い出しました。15年くらい前かな?エロス目的で読んだ記憶があります。たしかラプンツェルは塔での逢いびきで妊娠してたはずです。
そう思うともっと舞台版ではエログロ要素があったのでは?と思います。ディズニーナイズドしたんでしょうかね。思いっきりやってPG12にしちゃえばよかったのにとか思いました。舞台版知らんけど。
字幕が意味不明という感想もあったので、大丈夫かなぁ?と思っていましたが、私はわかりやすい字幕だったと思いました。
時々聞き取れる英単語と字幕の齟齬が少ない字幕で好みでした。
字幕翻訳は松浦美奈さんでした。あ、やっぱり!となりました。松浦さんの字幕とは相性が良いように思います。
こういう大作でお目にかかるのは珍しいように思いました。