「モアナの髪の毛に涙したんだよ」モアナと伝説の海 幸ぴこリンさんの映画レビュー(感想・評価)
モアナの髪の毛に涙したんだよ
『アナと雪の女王』を観て、それの常夏ver.でしょ…と思って鑑賞するとイタイ目を見る作品。
ハワイアンな海と常夏の島々、健康的なモアナの可愛さに癒されながら美しい海のCGを楽しむバカンスアニメを想像していたが、モアナが旅に出るとひとたびマッド・マックス怒りの海ロード(?)の始まりである。
荒れ狂う波。やっと出逢えたものの若い娘を洞穴に閉じ込めて逃亡をはかるマウイ。しかも船からモアナを何度も投げ捨てる……。旅のお供は、イカレポンチなチキンのみ。
それでも自分の信念と使命を信じ、協力を決意したマウイの事も信じ理解しようとするモアナの姿がいじらしい。
アナ雪の姉妹が抱く抽象的な孤独とは異なり、モアナの感じる孤独や危機は過酷でリアルだ。「今は2人だから」とマウイに言葉を投げ掛けるシーンは、モアナが自分自身にも言い聞かせているようでジンときた。
民族音楽とディズニー音楽のミキシングも良かったし、何よりCGが美しすぎて海のシーン(つまりほぼ全編w)の切り替わりごとに感動する。揺れるモアナの髪がもはや実写レベルの髪の毛である事にも何度も感動する。タトゥー・ボディが踊るシーンのマウイの肌のキメ細やかな表現にも感動する。アニメ映画とは思えない繊細なCGの1つ1つが視覚に訴えかけてきた。
マウイのずんぐりマッチョなアニメーションさながらのヴィジュアルがなければ、引き込まれて実写と勘違いしそうになる程。
夜の海でエイがモアナの舟を追うシーンがあまりに美しく、アイマックスシアターで観なかった事を深く後悔した『ライフ・オブ・パイ』の鯨バッシャーン映像を彷彿とさせた為に今回劇場へ足を運んだが、行って良かった。アニメーションがここまで感動させてくれるものだとこの映画が自分に知らしめてくれた。
ここまで凄いと、以降のディズニーアニメは劇場へ行ってしまうかもしれない、マジで。ファンになりました。
ただ1つ。
敵であるテ・カァを始め、タマトアの巣穴に出てくる敵のグラフィックがディズニーとは思えないレベルに怖いので小さな子どもに劇場で観せるには向かないかもしれない。
彼らの動きはジブリ映画『もののけ姫』の祟り神に類似しているが、それらが更に巧みなCG技術によりヌルヌルとリアルな動きを見せるのだから大人である自分すらゾッとした。
本編開始前に観れる短編の『インナー・ワーキング』もすごく良かった。インサイドヘッドのボディ版かな、と思って観てたけど現代の社会人にとっては心にくるショートムービー。