ズートピア : インタビュー
上戸彩、苦心の3度目声優挑戦 打たれても乗り越えられた理由
捕食・被食の垣根を越えたあらゆる動物たちが文明社会を築き、共に暮らす理想郷ズートピア。ウサギの主人公ジュディは、警察官として平和な世界にすることを夢にしていたが、種おのおのの特性を生かした役割分担があり、何にでもなれるわけではなかったことに気づかされる。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが放つ最新作「ズートピア」は、動物大好きな子どもはもちろん、大人が見てもそれぞれの思いを投影し感情移入することができる傑作だ。この作品でジュディの日本語吹き替えに挑戦したのは、ディズニー映画としては3度目の声優挑戦となる上戸彩。「ピーターパンII」に続き、「マレフィセント」ではオーロラ姫の吹き替えで絶賛された上戸だが、「アニメーションの吹き替えは実写映画の吹き替えと全く勝手が違って、とても苦労しました」とアフレコを振り返る。(取材・文/よしひろまさみち、写真/根田拓也)
「もともとディズニー映画が大好きだったこともあり、『マレフィセント』での吹き替えのチャンスをいただいたときはとても嬉しかったです。でも、今回の『ズートピア』はそれ以上に、喜びもプレッシャーも大きかったですね。アフレコのスタッフの方からも『とてもセリフが多い役です』と言われたんですが、セリフ量も表現も言い回しも、なにからなにまで難しくて……。スタッフの方からは『ここはジュディの尻尾が上がっているから』とか『耳が垂れているから』とか、彼女の表情や細かい動きを演技のヒントとして教えていただくんですが、目から鱗が落ちる思いでしたね。じつはスタジオに入る前は3日くらいで終わるかな、と思っていたんですが、実際には8日間もかかってしまい、“缶詰ってこういうことか”と思いました(笑)。毎日ダメ出しの連続で、なかなか進まない日なんて一言ずつ区切って録音したので6ページくらいしか進まなかったり。メンタルが弱い人だったら落ち込んでしまうような毎日でしたけど、何度見ても飽きることがない素晴らしい作品の力と、ジュディが心から大好きなキャラクターだったから、打たれても、打たれても乗り越えることが出来たのだと思います!」
「明るくハツラツとしているジュディは、一目で好きになりました。それに彼女の正義感が強さや曲がったことが大嫌いなところ、先頭を切って白黒はっきりするという性格は、私とまるで同じだと思います。私には兄が2人いるんですが、きょうだいの中で一番男っぽいのは私だと思うほど。上戸家は私以外、みんな繊細なんですよ(笑)。あとカワウソのオッタートン夫妻もとても共感しましたね。失踪してしまった夫を心配している奥さんの気持ちに思わず感情移入してしまいました。また、ナマケモノが働く運転免許センターのシーンは、実際にアメリカの免許センターがこういう感じだから、アメリカでは大うけしたんだ、とスタッフの方に教えてもらったのも印象的でした。この作品はこうやって、どこかに自分や友達と似ているキャラクターを見つけることができるという楽しみもあるんだと思います」
意外なことだが、「じつは普段は私自身が出ているドラマや映画はどこか気恥ずかしくて……」と、打ち明けてくれた上戸だが、この作品は別のよう。
「たとえば私はジュディの視点で楽しく見ることができましたけど、お子さんのいる友達はジュディのお父さんやお母さんの視点で見たっていいますし。動物の世界を借りてリアルな人間社会を描いていると思うので、いろいろな視点で考えさせられる映画ですね。ディズニー・アニメーションって、子どもから大人までいろいろな人が楽しみにしている作品ばかりですけど、この作品はとくにいろいろな人に見てもらいたいです」