独裁者と小さな孫のレビュー・感想・評価
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考える事が一杯あって面白い
監督で脚本のマフマルバフさんはなかなか異色の人で、イランかな?で政治犯だった人なの。作品の終盤で出てくる、拷問受けたりしてた人たちみたいに投獄されてて、映画と同じようにクーデターで釈放されて亡命し映画監督やってるの。
そんなマフマルバフ監督の考えが、ちょっとざっくりした書き方をするけれど、独裁政権というのは、そのものや独裁者だけが悪いのではなくて、もっと根底にある人間の悪意が問題なのだというの。
その考え方がすごく作品にも反映されていて、というか、もうそのままって感じなんだ。
バッドエンドと書いている人がいるけれど、はたして本当にそうだろうか?人によっては、見方によってはバッドではないかもしれない。場合によってはハッピーエンドなのかもしれない。それくらい色々と考えてしまうし、ただ人の悪意と善意を描いただけでエンディングなどそもそも意味はないのかもしれない。だって作品内で描かれているテーマは何一つ解決しておらず、今も続いているのだから。
監督のお考えは、作品内では割りとシンプルに表現されているけれど、その本質は、もう思想とかのレベルですごく大局的だから、いまいちピンとこないけれど、言いたいことはすごく良くわかったし興味深い面白い作品だった。
何もわからない、何も知らない孫の視点で始まり、独裁者の力の強さとクーデターによる失脚を描いた。
中盤からは大統領の視点で、今まで自分が国や国民に対してしてきた、残虐なことなどを直接的にも間接的にも知っていく。
大統領の口数が徐々に減っていき、ラストの砂浜では一言も発さなくなる。視点が大統領から国民に移ったのだ。
この、様々な視点で物語を紡ぎ変化していくストーリー展開は面白いと思ったね。
その中で、最初は国民に対して文句を言っていた大統領が、次第に変化していく様子が一番の見所だろうな。
あとは、乾いた空気感とピリピリ差すような、スリラーに近いくらいの緊張感ある映像が良かったよね。
事を直接的に見せない演出も一種の力強さを醸し出しインパクトを残した。五年ぶりに家に帰った男の顔だけを映す場面と、砂浜でのエンディングが特に印象深い。
内容的にも演出的にも考える事が一杯あって、本当に面白い作品だったね。
名前のある登場人物がマリアとマリアの二人。これがわからなくてまだ考えてるくらい面白い。
おじいちゃんの顔を少しでも孫以外にも向けられていたら
直前に観た『マイ・ファニー・レディ』との落差で余計に辛い。孫の可愛さだけがこちらの拠り所。どれだけのことをしてきたかを確認、実感するための逃避行で、どちらの立場(独裁者or出会う人々)としてみても辛かった。
臭すぎる演出。
誰に対し手忖度しているのか?訳わからない。
『もう、大統領と呼ぶな!私は国の元首ではなく、お前も殿下ではない』
要はこの言葉ですね。たから、邦題の『独裁者と孫』は間違ってます。
訳せば『大統領』になるのは、英語の苦手な私でも分かります。つまり、この独裁国家は明らかな『共和国』なのです。だから、本来は主権在民で三権分立のしっかりした国家なのです。それはこの独裁者が分かっています。つまり、このガキには最初から大統領の継承順位など無いわけです。
その点が日本人の陥りやすい間違いだと思います。
それを踏まえて、クーデターを考察すると、民衆蜂起の民主的なクーデターは、近現代の世界では無かったと思います。また、クーデター自体が稀ではありますが、たいがい『軍事クーデター』で勃発します。例外的には一党独裁の非民主的国家で、最初から『人民共和国』と称しています。つまり最初から人民独裁による共和国だった訳です。共和国が無理矢理独裁国家に変わったのは、近現代史のドイツとイタリアとスペインとアルゼンチンだけだと思います。そして大事な事は、それらの国では、どの国も次の世代に世襲してはいない事です。しかし、人類史上例外的に、あの国たけが世襲を残していると思います。
では、そのドイツやイタリアと一緒に民主的な米英を仮想敵国にした我が国はどうであったでしょうか?かつては軍事独裁国家だったかも知れません…しかし
現代の我が国は、イギリスと同じ立憲君主国です。君主はいらっしゃいますか、立憲が冠に付いていますから、憲法で守られた民主国家と言えます。しかし、『陛下』を英語で『Emperor』と呼んています。ちなみにイギリスでは『KING』です。憲法では、立憲といているのに、何故『Emperor』なのか、私は疑問に思っています。勿論、陛下は実権は持ちませんが、形の上での継承権はあります。
それを踏まえてこの映画は見るべきです。ちなみに、イランは以前は王国でした。パーレビ国王が旧国営放送に生出演していた記憶が私にはあります。
この映画を見て、プーチ○大統領を思い浮かべては間違いです。彼はロ○ア国民に選ばれました。○連のKGBたから、大統領になれた訳ではないのです。
【”砂上の楼閣”独裁国家崩壊後、国中を孫と逃げながら独裁者が出会った人々、知った事をシニカル・ブラックに描いた作品。独裁者を殺しても負の連鎖に陥るだけという高所大所からの視点で描いた作品もである。】
■多くの罪なき国民を処刑してきた冷酷な大統領が支配する独裁国家で、クーデターが勃発。
大統領は幼い孫とともに逃避行を余儀なくされ、変装で素性を隠して海を目指す。
その道中で憎しみと暴力の連鎖を目の当たりにし、自らの罪深さを思い知るが…。
◆感想
・独裁者が逃亡中に出会った人々
それは、多くの政治犯たちであったり、昔知っていた娼婦であったり、自分の身内を処刑され独裁者への憎悪を抱くモノであったり・・。
・だが、この作品では独裁者一人を糾弾しているのではなく、独裁者に唯々諾々と従って来た兵士や民衆の責任はどうなのか!という事もシニカルに描き出している。
<祖国イランを離れて欧州で亡命生活を送るマフマルバフ監督の想いを込めた作品。
近年、独裁者で処刑されたのは、ルーマニアのチャウチェスク大統領と、贅沢をしていた夫人が有名であるが、今作では独裁者を殺しても、負の連鎖に陥るだけである、という高所大所からの視点で描いた作品である。>
どこかで人は変わる!
2004年。モフセン監督がこの映画をどう製作したかが、ボーナス版についていたので観てみたが、根気がないと作れないなと思った。孫とマリアのダンスの撮影場所や軍や人々が大統領と孫の乗っているリムジンかなにかに襲ってくるシーン。監督のこども、ハナやメイサンも指揮にあたるが、もちろんモフセンが総指揮者。ジョージア(グルジア)での撮影で、監督たちは片言英語で指示を与え、通訳がそれをグルジア語に訳している。ここでは役者はグルジア語だけをはなす。モフセンは語学は分からなくても、孫が使うグルジア語の音で感情を理解しているんだと思う。いやあ、これは大変な撮影だったねえ。なぜ元帝政ロシア領で革命運動のあったグルジアを選んだのか?真相はモフセン監督のインタビューでも探して見ない限り私には分からないけど。
この映画での大きなトピックは復讐の連鎖、負の連鎖を断ち切ってろう。そして、人間にチャンスを与えて、人間更生を『この大統領を人民が創立する民主主義国家のなかで踊らせよう。』と。このことは民主主義国家のなかで大統領も、一市民として生きさせることだと判断した。これは全く大日本帝国傀儡政権の皇帝溥儀が投獄されたが、その後一般市民として生きていったことと同じようだ。
囚人だった一人の言う『そこから何も生み出せない。』彼も、大統領に裁かれた人の一人であるのに。でも、この囚人だった人は大統領と一緒に荒野の旅を続けて、人柄に触れている。一緒に、ウォッカを分けて、タバコを吸って、ギターを奏で歌い踊ったのを見て聞いて、このことから大統領が良心のある人間に変わっていくのを見届けている。(最後まで残っていた二人の囚人だった人は大統領だとわかっていたと思う。私は勝手に目つきや言動で判断しただけだが)このシーンは大切なシーンで、ウォッカが人から人へと渡されるシーンが長く感じたと思うが、このシーンから人間が変わっていく。連帯感の中から、苦しみ、すこしの喜びをお互いに味わっている姿なのだ。この続く荒野の旅は人間に変化を見せてくれる。特に好きなシーンは大統領が元囚人の足の傷を洗って手当てするシーンだ 。この意味は特に大きい。大統領が謙虚になったという意味を指すから。
荒野の歩きは一番いいシーンだ。この展開にグッとくる。
傀儡政権の溥儀は一般市民として生きたが、その後の中国政府は革命後共産党政権になった。モフセンが若い頃4?年間投獄させていたと聞いた。この時代は皇帝シャーでその反逆罪で投獄されたと記憶する。でも、その後の政権は民主主義?を学んだはずの原理主義者ホメイニである。でもホメイニ政権のお陰で、モフセンは社会復帰をしたわけだが、この映画のストーリーと似ている。モフセンはチャンスを与えられた。でも、この大統領は? モフセンは平和を訴えるという自分の主張のある映画作りをしているわけだが、この荒野の中で人の命の大切さに気づき、人間が変わっていっている大統領は? 一般市民だからチャンスを与えられた? 大統領という人にチャンスは?
孫への道は「後ろ振り返るな前(海)を見ろ」だった。
最後に一言、負の歴史を学ぶ必要性をしみじみ感じたよ。そうしないと同じことを繰り返すからねえ。
祖父と孫
客観的に考えれば都合のいい話である。
これをヒトラーに例えたらどうだろう。
ある独裁国家が崩壊。独裁者は国内を逃亡。その逃亡劇の中、犯してきた我が政権や苦しませた国民を目の当たりにする…。
糾弾される事はあっても、罰せられる事は無い。
それどころか擁護され、逃亡の助けられも。
多くの国民を貧困にし、苦しませ、時には処刑すらしたというのに…。
これがこの独裁者一人だったら納得いかないだろう。
逃亡の同行者に救われた。
幼い孫。
その純真無垢な存在、瞳。
当初は“独裁者”と“後継者”だった。
旅芸人のフリして逃亡。
次第に“祖父”と“孫”になっていく。
序盤、町中の明かりを電話一本で明滅してみせて高笑いする二人。中盤、ひもじさの中、野鳥の卵を見付けて嬉しそうに笑い合う。その対比が印象的。
決して祖父と孫のハートフル・ロードムービーではなく、あくまで社会派作。
しかし最後は、それら悲しさとほろ苦い感動が絶妙に入り交じった。
勉強になる
おじいちゃんものを探していて辿り着いたお話。
ロシアの方の革命とか戦争をモデルにしているらしいのですが、勉強になります。
こういうことするんだ、とか具体的な戦争のグロさとか。
でもそういうのを、全然ダメージ受けないようにさらっと描いていて、何かいい感じ。
勉強として色々頭に入って来る。
リアルに色々表現すると、重くなってしまって「勉強になる」とかそういう余裕がなくなってしまったりトラウマになってしまうので・・・。
このお話はとてもキレイな少女漫画(グロい表現のないという意味)を映像化した感じのものです。
なんか現実味がなくて「あれ・・・?」という感じ。
最後のセリフは良かった。
『独裁者を殺しても、国内ではまた暴動が起きる。
結局いいことが起こる訳がない。
人を殺したところで、
復讐をしたところで、負の連鎖を生み出すだけで何の生産性もない』
国を良くしようと尽力を尽くしても、「統治するもの」が国をまとめないと国が良くならない。
でもそれには限界がある。
あるいは、もっと状況が悪くなっていく。
統治者が権限を持っていれば、どんなことも出来てしまうから人は抑えつけられる方向に行ってしまうから。
国を良くしようとした結果が、統治者の独裁化なのだ。
独裁者を独裁者たらしめるのは民衆であり、
独裁者を殺したところで、国中で混乱が起こるのは明白なのである・・・
良い例がヒトラーとフセインだろう。
死んだ後に国中で大混乱が起き、
中東ではフセインがいた頃以上に紛争が激化している。
何かそういうのをほんの少し考えさせられたというか。
それに気づいただけでも勉強になりました。
少女漫画を映像化した映画、ととるとすごく素敵なお話かもしれません。
ドラマ映画ならぬ、少女漫画映画。
映画としては・・・なので低評価です。
孫の可愛さと戦争の悲惨さの対照的な2つの視点。
ずっと観たかった映画の1つ。
独裁者の国が崩壊し、大統領が逃亡する話。
大統領の命令は絶対であるため、国民は逆らえずに困窮とした生活を送っていました。
しかし、彼らの暴動によって国が崩壊し、大統領は命からがら逃げ出します。
小さな孫を引き連れて、国を四方八方転々とする中、国民の悲しみや絶望を目の当たりにするのです。
懸賞金も掛けられ逃げ場のない中で、人々の本音を知った大統領は、これから先どう生きるのでしょう…。
ヒトラーの風刺のような独裁主義国の世界に夢中になりました。
可愛い孫と対照的な、市民の怒りの表情に注目です。
今シーズン疲れた映画1位を贈る
無関心•2•••好
並•••4•凄 真剣
無••3••涙/無••3••固ゆで
無••••5社会派/大衆•••4•狂信
標準/紹介
俺の満足度 70点
作品賞可能性 80%
疲れた。
今シーズン疲れた映画1位を贈る。
静か、緊張感、先が見えない、そもそも助かったら喜びたくないし、捕まって吊るされるのも見たくはない。設定からして、行き場がない、ゴールがないじゃないか。
それを最後まで観せる力量は、すごい。尊敬。
人間にとっての不幸を知るための映画。修行だね。
映像美と子供の純真さがあってこそのバランス。映画ならでは。
それにしても、疲れた。
革命が起きて題名の2人が逃亡する
ルーマニアのチャウシェスク大統領を思い出した。
ぼやかされたラストシーンが…
劇中とエンディングに使われたブルースというかフラメンコというかしゃがれた声の歌が印象的。
マリアは何歳?
復讐の連鎖は、何処かで止めなければ。
独裁国家の大統領を恨む者は大勢いる。孫と国中を逃げ回り、最後は捕まり、殺されそうになるのだが、復讐の連鎖は、止めなければならないんだと言う者が現れて、それでも殺そうとする者たちに、そいつを殺すなら、俺を先に殺せと首を差し出す所は、びっくりした!(泣いてしまった。)家族を無惨に殺されるのは、哀しいことだけれど、結局は、“許せる”ということが大事なのだろう。
孫に萌える
とにかく孫が可愛くて。
演技もいわゆる子役の過剰な可愛さを押し付けた感じではなく自然で良い。
ラスト、暴徒化した民衆に捕まってからの両手を挙げて泣いている孫の姿は残酷な結末に繋がる気がしてハラハラしてしまう。
地味なロードムービーで淡々と話は進むが孫の純粋無垢な姿を観ているだけで退屈だったりは皆無。
ジプシーな音楽も良かった。
マフマルバフ
かつてない大掛かりなエキストラ。明快なストーリー、明確なメッセージ。ちょっとサイクリストとかに近いエンターテインメント。ほとんどただ一人政治的な映画を描く監督だし、描ける出自を持ってるアクティビスト。ただ、911前の作品群と比べると、アンジェイ達と同じ匂いがしてきてて、ちょっと物足りない。結局イェジーだしアッバスでしょ的な
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