劇場公開日 2015年8月22日

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「同じ穴の狢」ナイトクローラー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0同じ穴の狢

2016年2月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

ゴミを漁るようなケチな仕事からパパラッチになった男が、高額買取の刺激的な映像を求める余り常軌を逸していく…。
去年日本公開された洋画の中でも指折りの一本!
もし去年中に見ていたら間違いなく年間ベストに入れていただろう。
見る前から期待していたが、評判に違いナシの衝撃のサスペンス!

その昔、TV局の映像ディレクターと盗聴マニアの男がヤバい事態に巻き込まれていく「[Focus]」という邦画があったが、それを彷彿させた。
このスリル!ゾクゾク感!胸クソ悪さ!
どんどん狂気じみていく主人公、反面教師的なサクセス・ストーリーは、不謹慎ながら痛快ですらあった。

最初は、ちょっと俺もやってみよう、ぐらいだったろう。
たまたま撮れた映像が高値で売れ、病みつきになった。
その美味はまさに麻薬でありギャンブル。
一度味を覚えたらもう止められない。
どっぷり骨の髄にまで染み渡る。
高価い報酬も魅力。
でも主人公ルーにとって、金と同じくらい…いや、それ以上にこの仕事そのものが堪らないのだろう。
巡り出会った天職。
毎日がドキドキするような興奮。
自分も今の仕事は決して給料はいいとは言えないが、それなりにやりがいを感じている。
…あ、勿論、こんなヤバいのとは違うちゃんと全うな仕事だけどね。

この素晴らしきクズ野郎!
ジェイク・ギレンホールの狂演は圧巻。
ギョロッとした目、痩せこけた頬…その異常なまでの執着心を表すのに充分。
人としてのモラルや命より、特ダネ、金。
「我々はプロだ」「彼はネタだ」…あるシーンにはゾクッとさせられた。
同業者や自分の映像を高く買ってくれた恩あるディレクターへの威圧的で独善的で高慢な態度。
ある現場では、常人ならまずする事をせず、カメラを回し続ける。
更なる映像を求め…。
主人公がクズであればクズであるほど比例して映画が面白くなってしまうのだから困ったものだ。

レネ・ルッソ(彼女も名演!)演じるディレクターも印象的。
全ては視聴率。
ルーの狂気に囚われるかのように、彼女もまた正気の沙汰じゃなくなっていく様がヒヤリとさせられる。

ルーの助手、リック。
キチ○イ連中の中で、唯一のまともな人物。
次第にルー色に染まっていくかと思ったら…
弱肉強食の世界では仇となる。
リズ・アーメッドも好演。

ダン・ギルロイの緻密な脚本と手堅い演出は見事。
夜の都会の映像が美しくもスリリング。

売る側、買う側にとって、人の不幸は蜜の味。
その味を何より楽しみにしているのが、見る側。
年明けから日本の芸能界はスキャンダル続き。
やれ解散だの、やれ不倫だの、やれ三角関係だの、やれ逮捕だの…。
はっきり言って、どうでもいい、下らないものばかり。
それらをとことんスクープし続けるマスコミ。
毎日毎日大々的に取り上げる各局。
ネットであれこれ叩きながらニュースから目が離せない視聴者。
皆、同じ穴の狢。

近大