アメリカン・スナイパーのレビュー・感想・評価
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傑作反戦映画「ハートロッカー」の先を行く映画だが、着地点は「ランボー」で経験済み。
クリス・カイルが亡くなって2年。という現実がごく最近の出来事であったとしても、このテーマを取り扱うのは若干出遅れ感はある。
そう、肌触りは違えど、「フルメタル・ジャケット」に思った、出遅れ感を感じる。
出遅れ感が映画のデキを決めることは決してないとは思っているが、「いまさら」「いいとこどり」と感じる場合はやはりそれだけ損をしている。
本作、「ハートロッカー」をプロパガンダと言っている、ものすごーーーく勘違いをしている観客のために、わざわざ分かりやすく、一方「ローンサバイバー」というこれこそ、まさしく、ザ・プロパガンダ映画を、反戦映画と勘違いしている観客のために、着地点は「ランボー」のさらに先を行った、より分かりやすい「ヒーロー映画の皮をかぶったアンチヒーロー反戦映画」。
題材が真摯なのに出遅れ感を感じるのは、すでに「ハートロッカー」という、これより先に一人の男にまじめに向き合った反戦映画の決定版が出ているからだ。
そのうえ、実話をもとに、他の娯楽作のおそらく「いいところどり」した感がさらにずるさを感じる。無音のエンドロールなど、やりすぎ。
イーストウッド監督のアクション映画にはオレは興味がない。実際、本作もアクション的なシーンは妙に娯楽よりなくせに、絵自体は単調である。敵対するスナイパーとのやり取りは、明らかに娯楽よりだが、なんとも絵も緊迫感もなく退屈。また銃撃戦真っ最中に電話するシーンなんて、要るか??
最悪なのはクライマックス。いくらなんでも描き方がバカすぎる。
帰国後の描写もあまりに分かりやすく描き過ぎ。実話だといっても、こりゃいくらなんでも。
むしろ、主人公のちょっくら行ってくるぜ感のほうがとても悲しく、恐ろしい。銃を握ることでの心の平穏は悲しいことだ。戦争は悲劇だ。
それでも彼は、彼にしかできないことを、彼が実践できているという絶対的な事実。
それはだれも決して否定できない。
それゆえの心の崩壊が、彼自身でなく、むしろ救った者たちからより如実に表れることの恐ろしさ。
その点はまさしく傑作反戦映画「ハートロッカー」の先に行く映画であることは違いないし、その着地点は我々はすでに「ランボー」という傑作でも経験している。
それゆえ、本作の出遅れ感といいところどり感が、拭えない。
米軍史上最多、160人を狙撃した、ひとりの優しい父親。
原題
American Sniper
感想
アカデミー賞6部門ノミネート!
この男、英雄かー悪魔かー
伝説的スナイパーの半生を描いた、衝撃と感動の実話
国を愛し、家族を愛し、戦場を愛した男。
派遣1発目から母親と子供は辛いですね…
公式記録では160人の射殺って仲間にとっては英雄、敵にとっては悪魔ですね。
仲間を守りたい、良き夫、良き父親でありたいと願うんですがどんどん戦場で心を蝕まれますね…
クリス・カイルはその日ー、力になろうとした元兵士に殺された
衝撃的すぎました!!タヤの心配そうに見送る視線がなんだか切なかったですね…まさか生きてるカイルを見るのが最後になるなんて…
※伝説の男
※ラマディの悪魔
国家が合法的に“人(敵)を殺せ!!“と命じることの悲劇!
特別な視力と、特別な指先の感覚。
クリス・カイルは特別なライフル射撃の名手だったのだろう。
天性のスナイパーだった。
1920メートル先の標的に命中させる腕前。
19999年〜2009年の間に4回イラク戦争前線に派兵して、
狙撃の名手として「ラマディの悪魔」と敵に恐れられて、
首に懸賞金をかけられた。
「伝説のスナイパー」として、
アルカイーダの戦闘員を160人殺害した、とされる。
クリス・カイル(1974年生まれ、2013年2月2日死亡)
彼はほぼ2キロメートル先の標的に命中させる腕前。
これは五輪メダリストを大きく凌駕するといえる。
オリンピックでは、2キロ先の標的なんて狙わない!!
カイルのライフルにはスコープ(拡大鏡)が付いてるとは言え、
クリス・カイルが超人的腕前なのは間違いない。
1999年〜2009年にかけてイラクへの4度の派兵、
延べ1000日。
帰ってくる度に、妻から、
「心が戦場から戻っていない」と、指摘される。
恐怖や刺激(スリル)と非日常に麻痺したカイルに、
帰国後の生活は【仮の生活、仮の住まい、仮の姿】
その落差に妻もカイル自身も戸惑う。
カイルが兵士を辞める決意をする場面。
不思議なことにカイルは身の危険の差し迫った場面で、
妻に電話をしながら照準と対峙したり狙撃したりしている。
その場面、妻はカイルの死を非常に身近に感じる。
スリルの臨場感のお裾分けというか?
危険の共有をする=それが彼ら夫婦の絆だった。
イラクの戦地で出会っているから、妻のタヤも当然、
軍の関連機関で働いていたのだろう。
戦地の前線で妻に電話するカイル。
ママにすがる子どものように、日常会話を交わす。
それでママ役の妻は危険と死を共有してパニックになり、
そして強い妻は乗り越えて行く。
非常に興味深い・・・カイルは戦場の最前線で妻に精神的にすがる。
妻は堪ったものではない、臨月の時すら電話する。
それだけ絆の強い夫婦でした。
そして3回目の派兵でカイルは狙撃兵仲間のビクルスをイラクの有名狙撃手に
撃たれる。
ビクルスは、弾の跳ね返りを顔面に受けて失明する。
そしてカイルは4回目の派兵に向かい、ビクルスの敵のイラク有名狙撃兵を
向い討ちにするのです。
それが1920メートル先の標的《イラク狙撃兵》
これは見事にカイルらしく成功します。
敵を返り討ちした瞬間です。
しかしご存知のように、敵を狙撃するということは、
当然自分の居場所が明らかになるのです。
イラク兵はカイルの狙撃現場のビルに大挙して押しかける。
凄いですよ。
四方八方から蟻のようにイラク人やイラク兵が群がってくる。
武器を携えて・・・。
ここからヘリコプターを呼び、爆弾を投下して貰い、現場を目眩しをして、
カイルたちはジープに乗り、生命からがらやっとこさで避難をします。
この部分でも半泣きで妻に電話します。
本当に妻は、同僚の兵士のように支えている。
精神的支柱。
本当にアメリカ人は、我々戦争を80年近く体験していない日本人とは
大違いです。
戦場で生死を懸けて戦っている夫を陰でサポートし、
帰ってきたら彼のPTSDと向かい合う。
なまじの苦労ではない。
その後、戦場では偵察ドローンがら攻撃用のドローンが活躍する場に
大きく変わった。
しかしロシアとウクライナの戦争で多くの戦車が使われたことに
私は内心驚いた。
ロシアとウクライナという広大な土地だからこそ戦車が活躍するのだろう。
ウクライナではスナイパーもやや手持ち無沙汰で、1日中待機して敵を待つ
場合もあるという。
イラク戦争の英雄カイルはPTSDの退役軍人に近距離から射撃されて、
わずか38歳で命を落としている。
「殺して終わり」的な短絡的な思考。
そういう暴力を激しく嫌悪する。
狙撃兵に焦点を当てた戦争映画。
アカデミー賞6部門ノミネートでも、作品賞はおろか監督賞も
主演男優賞も与えられず。
アカデミー賞は人畜無害な「アルゴ」に与えられても、
「アメリカンスナイパー」のような現実を晒す作品には
決して与えられないのです。
軍隊の要らない世界
戦争なんていいことひとつもないのに、映画は良かった。
金メダリストだという敵を撃つシーンはめっちゃCGだったけど笑
そして砂嵐。何も見えん笑
カイルの家族があまり出てこなかったのが残念かな。
弟とも疎遠に?
もう少し生い立ちから掘り下げて欲しかったかも。
しかし軍隊の要らない世の中は来ないんだろうか。
戦争は皆を蝕む。
目には目を、という言葉にそうだそうだと頷いてしまう自分がいる。
綺麗事ばかりでは済まされない。
実話
このような暗い映画は退屈なところが多い印象だが、これはあまりなかった。
戦争をリアルに描いていて、ハラハラドキドキだった。主人公の苦悩もはっきり描かれていて、父がカイルによって殺されて、その現場を見ていた男の子が父の持ってた銃を拾おうとした時、「持つなよ…持つなよ……」が良かった。
やっぱり子供に対してあまり撃ちたくないということが伝わった
奥さんとのラブストーリーも良かった。
戦争映画の主人公はやはり、PTSDに悩まされる。ラストもかわいそうだった。
ブラッドリーはカイル役を演じるため、82㌔から107㌔まで体重を上げ、190㌔ものダンベル?を持つことができるようになったそうだ
これだけ世の中が進歩しても戦争が絶えない虚しさ
平和なアメリカと戦地であるイラクを行き来するカイルのみならず、軍人皆の心情は想像するに余りある。どうにもならないものなのだろうか。
クリント・イーストウッド監督の作品はハッピーエンドとはいかないものが多いため、本作はどうにかお願いします、って期待したが…やはり本監督らしさがよく出た作品となった。
戦争は誰も幸せにしない
自国では英雄
敵国では殺人犯
敵対することで180度真逆の意味にかわるのが戦争なんだと教えられる
PTSDにより自分らしさや家族との時間が削がれていく様がリアルすぎて怖かった
クリスの辿ってきた
バーの運命的な出会いから、結末まで
自分が成し遂げたいこと、誰のために生きるか、
その選択により人生が大きく変わっていくこと
考えさせられた。
映画的に
砂ぼこりのなかの銃撃シーンは本当に凄かった。
アメリカ人のプライドとなった男
米軍史上最高のスナイパーの自伝を、クリント・イーストウッドが映像化。
原作はクリス・カイルの同名書籍。ハヤカワ文庫刊。
米海軍ネイビーシールズ・チーム3所属のクリスは、4度のイラク遠征をしたスナイパー。
狙撃による射殺は確認した数だけで160人以上、未確認含めると250人を超えるという。
マーベルコミックスのヒーロー"パニッシャー"のドクロマークを装備に刻み、次々と敵を排除する彼ら——とりわけ目覚ましい成果をあげるクリス——を、仲間たちは「ザ・レジェンド」と称賛し、敵は「悪魔」となじるようになる。
チームがイスラム活動家の「ザルカーウィ」捜索に力点を置く中、敵はクリスに狙いをつけ、元オリンピック選手だった狙撃手「ムスタファ」をさし向ける。
3度目の従軍を終え、アメリカでの日常生活をおくるクリスだが、戦闘ストレス反応に苦しみ、家族とうまく折り合えない。
「あなたの魂はまだ戦場にいるの。お願いだから帰ってきて」
愛する妻タヤに送り出され、最後の戦場に向かうクリス。
敵に肉迫するチームだが、それはクリスを誘いだす罠だった。
砂漠の嵐が迫るなか、死力を尽くした戦闘と、ムスタファとのスナイパー勝負。
敵との距離は1920メートル。
互いに狙いをつけ、そして最後の弾丸は放たれた。
冒頭の狙撃シーン。
原作自伝では母親だけが殺されていましたが、イーストウッドが訪ねたところ「実は、撃ったのは子供の方なんだ」とクリスは言ったとか。
それを受けて両方射殺するという描き方をした理由や、「敵を殺したことを後悔したことはない」と語るクリス・カイル本人の内面を、子供時代の父親の教育とつなげて語る部分に、現代のアメリカ人の価値観が読み取れます。
ムスタファの存在も、原作ではわずかに一文書かれたのみ。
この映画は娯楽フィクションとして作られていますが、そこに力強い生命感を与えたのは、クリス・カイルという実在の人物に重点をおいて「戦争」を描いた事です。
銃の国テキサスに生まれ、狼から羊を守る"番犬"として育った最強のスナイパー。
同国人の元海兵隊員に射殺された末路までを描いた、純粋なる「アメリカ人のための」、そして我々にも通ずる戦争映画です。
事実の重み・本質を突きつけることで種々のことを考えさせるとても優れた戦争映画
クリント・イーストウッド監督による2014年製作の米国映画。
原題American Sniper、配給ワーナー・ブラザース映画
ブラッドリー・クーパー演ずる主人公クリス・カイルを、英雄扱いせずに、一人の家族を持つ米国人のイラクにおける戦争体験として淡々と描いていることが素晴らしい。1回目2回目3回目4回目と派兵が重なる中、仲間は傷つき殺され、弟も精神を病み、彼自身の心も傷ついていく。
そして戦いの原動力は、崇高な精神よりも仲間をやられた復讐心に変わっていく。そして、4回目派遣で、仲間を殺した元オリンピック出場の狙撃手を仕留めることができた。160名を射殺!しかし、見ているこちら側は、米国から遥かに遠い異国で、彼に限らず、こんなにヒトを殺すことの意義に否応なく疑問を持つ。
子供に銃口で狙いを定めているクーパーが、子供が砲弾を手放し、思わずホッとする姿に共感を覚えた。その前には、米軍と闘おうとする息子と母を共に射殺もしていた。本国に全く危害がない遠い異国で、米兵達は何と戦っているのか?大いなる疑問を突きつける強烈な映像であった。
戦場から離れても彼は精神的障害に苦しむ。同様の人達を助けることでようやく回復してきたところで、彼は戦争帰りの人間に射殺されてしまう。立派な葬儀を国家は行ってくれたが、殺した方も殺された方も、国家による要請に従って戦争に従事しての悲劇。国家というものの非情さを、今ウクライナに派遣されているソ連兵士のことを想いながら、思い知った。
狙撃対象等に脚色は多少あるが、事実の重み・本質を突きつけることで種々のことを考えさせるとても優れた映画であった。クリント・イーストウッドの戦争映画にはいつも感心させられる。
製作クリント・イーストウッド、ロバート・ローレンツ、アンドリュー・ラザー ブラッドリー・クーパー、ピーター・モーガン、製作総指揮ティム・ムーア、ジェイソン・ホール、シェロウム・キム ブルース・バーマン。
原作クリス・カイルの自伝『American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History』、脚本ジェイソン・ホール(アメリカン・ソルジャー等)。
撮影トム・スターン、美術ジェームズ・J・ムラカミ シャリーズ・カーデナス、衣装デボラ・ホッパー、編集ジョエル・コックス ゲイリー・D・ローチ、視覚効果マイケル・オー、海軍技術顧問、ケビン・ラーチ
出演はブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェイク・マクドーマン、ケビン・ラーチ、コリー・ハードリクト、ナビド・ネガーバン、キーア・オドネル。
ヒーローの辛さ
映画の主人公は、全ての人から見てヒーローかと言われるとそうではない。
それでも、映画の最後に彼の人生が終えた時、
彼を迎えてくれた人々の多さ。
彼は紛れもなく多くの人の中でヒーローだったと言う事実。
ヒーローであることは、伝説も言われることの辛さ
そんなことも感じる
そこから最後きちんと向き合って進める強さ。
やはりヒーローの強さが心にもあった。
白黒つけてない映画
国を守るため、正義を守るためと飛び出していくがたとえ生きて帰ったとしても戦争でおった傷は当人の人生に大きな影響を与えてしまうのだと伝えている映画だった。
よくある戦争映画は反戦もののはずが存外戦争のドラマがかっこいいだけに、好戦的な映画になってしまうこともある。
しかしクリントイーストウッドの戦争映画は父親たちの星条旗に続き二作目の鑑賞だったがいずれも米軍目線で進むものの、アメリカを正義のヒーローとして描いている完全超悪ものにはなっておらず、巻き込まれていく男たち、命のやりとりをする無情さ、戦争の虚しさを教えてくれる。
ラストに実際の葬儀の映像がでて、クリスを英雄視しているなどの指摘もあるが、あのシーンはクリスの戦場での無情な思いを置き去りにして、アメリカでの賞賛が一人歩きしているというような悲しい意味だと感じた。
ラストのあっけなさ、でもそれが事実であるという重み
この映画、ラストのあっけなさのために2時間の上映時間がある。
この映画は実在のスナイパーであるクリス・カイルの自伝を基にした作品で、従軍して一番最初に狙撃したのが子どもと女性だったというのも事実のこと。狙撃手だったのにいつのまにか海兵隊に同行し突入の指導とかしてたのも、敵を160人も殺傷して伝説のスナイパーと呼ばれたのも事実。1,920メートル先への狙撃シーンは、スコープ越しでも人が全然判別できないしホントに撃てるの?という距離を狙撃するがこれも事実らしい(ちなみに普通の狙撃手なら1,200m前後が限界で、2,000m前後というのは離れ業といわれる距離みたい)。PTSDに悩む帰還兵や退役兵のために慈善活動をしていたのもホント。そしてそんな人物が助けるはずだった退役兵にあっけなく射殺されてしまうのも現実に起きたこと。あれだけの戦地を潜り抜け生き残り伝説といわれた人が、退役兵のために尽くしてきた人があっけなく死んでしまう…その事実を観客に突きつけられる。それは感動の涙やスタンディングオベーションを求めるものでは当然ない。ただただストーリーが、登場人物の人生が、ぷっつりと切れた空虚感のみが残る。
これは反戦映画なのだろうか?一部のレビューで、戦争や軍人を称揚したりイラク戦争におけるアメリカの正当性を主張しているように感じるというものがあるが、少なくとも自分にはそんな監督の意図は感じなかった。PTSDに苦しむ主人公の姿は原作である自伝にはおそらくほとんど登場しなかった部分であり、監督が本人の周りを取材して取り入れた要素なのだろうと思われる(戦争や本人を称揚するならそんなシーンいれないだろう)。では、反戦映画にありがちな戦争の酷さ・悲惨さのみを強調したものかといわれれば、主人公と米軍兵士のチームワークや活躍を描いてて悲惨さばかりを強調しているわけではない。少なくとも国を守るため戦った兵士に対する敬意は感じられるし、悲惨さを描きたいならそもそもこの人物を題材にしないだろう。
この映画で監督が描きたかったのは戦争(特にイラク戦争)の肯定・否定というより、作中でも言及される「戦争で影響を受けないものはいない」という一点のみと感じる。もちろん戦争がなければ何も起きないしそれが一番いい、しかし911はじめ国家間の対立は起きてしまうし現実として対抗しなければ銃後の平和は存在しない。しかしそのなかで戦争で影響を受ける人たちが数多く発生してしまう(それはアメリカ側もイラク側も)し、戦争の影響は何も戦場だけではない…主人公が殺されたのが平和なアメリカ国内であったように。クリス・カイルという実在の人物を通じて、威勢よく戦争を叫ぶ好戦派には国内にも影響する痛々しい現実を見せ、兵士をまるごと悪人扱いする反戦派には痛々しい犠牲のもとに成り立つ平和を見せる。単に戦争を肯定するわけでも否定するわけでもなく、ただただ大きな影響を与える災害としての側面を淡々と描いた映画だったと思う。
目には目を、歯には歯を、銃弾には銃弾を…。 深みにはまった人間を飲み込む、運命の非情さが胸をつく。
実在のスナイパー、クリス・カイルの生涯を映画化。
米海軍の精鋭部隊、ネイビーシールズに所属するスナイパーのクリス・カイルは、イラク戦争においてその伝説的な活躍から英雄として持て囃されるようになるが、次第に戦争が彼の心を蝕んでゆく…。
監督/製作は「硫黄島プロジェクト」『グラン・トリノ』の映画界のレジェンド、クリント・イーストウッド。
主人公クリス・カイルを演じたのは、『イエスマン』『ハングオーバー!』シリーズのブラッドリー・クーパー。また、クーパーは製作も担当している。
第87回 アカデミー賞において、音響編集賞を受賞!
第39回 日本アカデミー賞において、最優秀外国作品賞を受賞!
”伝説の狙撃手”クリス・カイルの人生を映画化したものではあるが、所々事実とは違う脚色が施されている。
例えば年齢。クリスがシールズの入隊訓練であるBUD/Sを受けたのは30歳だとされていたが、実際には20代ですでにシールズ入りを果たしている。
作中に登場するターゲット、"殺戮者"の存在はフィクションであり、また戦友の仇である宿敵、ムスタファは実在するもののクリス・カイルとの面識はない。
上記のように、劇映画として盛り上げる為に事実とは異なる味付けをしている作品であり、この映画の内容を鵜呑みにしてクリス・カイルという人物を分かったような気になってはいけない。
とはいえとはいえ、本作で大事なことは彼の戦場における活躍ではない。
「戦争による心の傷は、どんなに屈強な人間をも飲み込んでしまう」というリアルを描くことこそが本作のキモであり、そのことを描く絶好の題材がクリス・カイルであったのだろう。
戦場映画ではあるが、戦争映画ではあらず。あくまで人間ドラマを扱った作品なのである。
映画の冒頭、ライフルを構えたクリスの先にいるのは、子供を連れた女性。女性を殺害したあと、果たして子供を撃つのか撃たないのか…、というところでクリスの少年時代へ物語は遡る。
もうこの冒頭5分が上手すぎて上手すぎて!一気に物語の中へ引きづり込まれる感じです。
はじめてのミッションで殺害したのは女と子供。このことが最後まで彼の心に深い傷を残します。
家族の元へ帰っても何気ない日常の音やドライブに過剰に反応してしまい、すぐにまた戦場へと舞い戻る。
何も映っていないテレビの画面をじっと眺める彼の姿に、薄寒いものを覚えました。
父の教えである「羊を守る番犬であれ」という教訓が彼を突き動かしていましたが、宿敵ムスタファを撃ち倒したことにより、決定的に彼の心は崩壊します。
泣き崩れ、妻に電話する彼の姿には英雄的なところは一切ありません。
そんな彼を、銃撃の騒音と砂嵐が包み込んでゆく。カオスな戦場と崩壊した精神が渾然一体となったかのような圧倒的なカタストロフィ的結末には、宿敵を倒し仲間の仇を取ったことに対する晴れ晴れしさは皆無。
戦争の無常をここまで端的に表現したイーストウッドの手腕に脱帽。
ここで映画が終わっていても、十分悲劇的で皮肉な物語になっていたと思います。
しかし、この映画はここでは終わりません。
日常に戻り、心の病から立ち直ったカイルは、自分と同じようにPTSDにかかった軍人の支援活動をしていた矢先、その軍人によって殺害されてしまいます。
実はこの出来事が起こったのは映画化が決定し、制作が進んでいた最中。
つまり、このクライマックスは製作陣の予期せぬところだったのです。
もしもクリス・カイルが生きていたのならば、映画は全く違うものになっていたでしょう。どれだけ悲劇的な内容であったとはいえ、救いのある物語になっていたはずです。
しかし、運命は彼を逃さなかった。
作中、あるシールズ隊員が仲間が狙撃されたことに対し「目には目を」と発言していました。
この復讐法に則り、クリスはムスタファを殺害するのですが、多くの命を弾丸によって奪ってきた彼もまた、戦争が生み出した弾丸によって命を奪われるのです。
こんなにアイロニーに満ちた出来事が現実で起こり得るのですから、本当に人生って何があるかわからないものなんだな…。
イラク戦争に正義はあったのか否か、とかそういうことではないのです。
子供だろうが戦士だろうが、戦争に巻き込まれれば多大なダメージを負うのです。
今現在でも、まさに進行形で世界のどこかではこんなことが行われているという事実に、なんともやるせなさを感じずにはいられない映画でした。
英雄的な見送りからの、無音のエンドロールは強烈です…。
※早撮りで知られるクリント・イーストウッド。本作でも撮影は超スピードで行われたらしく、その日数は44日!
これだけハードな戦争描写があるにも拘らず、44日で撮れちゃうんだからすごすぎ。
しかも当時84歳だったイーストウッドは、撮影中は一切座らなかったらしい。
あのクリント・イーストウッドが立ちっぱなんだから、撮影現場では誰も座ることが出来なかったとのこと。
なんか高倉健みたいなエピソードだと思って、ちょっと笑えたんだけれど、やっぱりこのお爺さんはとんでもないお爺さんですね😅
ちなみに、本作の撮影の為に体を徹底的に鍛えたブラッドリー・クーパー。
無茶苦茶デカいなっ!と思っていたら、なんとこの撮影のために20kg以上の増量を達成したらしい🏋️♀️
自らプロデュース業も行いながら、100kgを超える筋肉ボディを作り上げるんだから、ブラッドリー・クーパーがいかにこの映画に情熱を注いでいたかがわかる。
いや、それにしても凄いな…😅
国の為に活躍したスナイパー
従来の戦争映画と違い、音で驚く場面などが極端に少なく、見やすい印象。
戦争と家族の間で悩まされている姿がリアリティを感じた。
メッセージ性というよりは現実を伝えてくれている映画。
様々な苦悩の中で色々な葛藤があることを学んだ。
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