「だまされたかった」イニシエーション・ラブ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
だまされたかった
小説は未読。最後に大どんでん返しがある、と広告で見当をつけてしまっていたので、その意識で見てしまい、sideBに切り替わった瞬間に仕掛けがわかってしまった。
そのため、sideBの物語が「あーこういうことね」という感じで観れてしまい、正直退屈になってしまった。
いうなれば、推理小説で犯人がわかってしまったあと、消化試合のように話を読み進めなければならなくなった気分。
もし、最後まで秘密が分からなければ、2人のたっくんがどしーん!とぶつかったシーンで驚くことができ、その瞬間に全ての伏線が電光のようにバババっとつながり、最高のカタルシスを味わうことができただろう。
すごく悔しい。
もっとわかりにくくして、最後の最後までわからないような仕掛けにしてほしかった。それこそ元ネタのシックスセンスのように。
でも、わかりにくくしたらしたで、わけわかんなかった、と文句いう人が出てくるんだろうか…。そんなことはないと思うのだけど…。大抵の人は、どしーんとぶつかるかなり前に気づいてしまうと思う。
わかりやすく作りすぎてしまってて、この映画の最大の仕掛けがあまり効果的になっていないのは、やはり失敗だと思う。本来は、徹底的に最後の最後までわからないように隠すつくりにするべきだった。
80年代の景色や雰囲気の再現は良かったし、役者の演技も良かった。前田敦子はダイコンのイメージがあったが、そんなことはなかった。裏のある女の完璧な演技。
イニシエーションラブ、という言葉ははじめて聞いたが、そのの恐ろしさや深さを知ることができた。
恋愛のリアルがよく表現できてた映画だと思う。
まゆがひどい女だ、と思う男は多いと思うけど、たぶんかなりの女性はまゆに親近感を持つんではないだろうか。
つきあってる男性に愛してもらうためなら、平気で嘘をつくし、罪悪感もない。別れることは悲しいが、乗り換えることに苦しみはない。
でも、愛してもらう、ということに関しては異常に一途で、健気ですらある。ゆうきをたっくんと呼び、同じ指輪をプレゼントさせ、同じくつをプレゼントするのだって、「自分の中のただ一人のたっくん」だけを愛している、と解釈すれば非常に貞節とも言える。
そういった男女の恋愛観のズレがうまく表現されてたと思う。
しかし、このあとの展開の想像が楽しい。男たちはあくまでまゆに幻想を抱き、愛しようとする、というのもありえそうだし、その幻想から冷める、というもありえそうだ。どちらにしろ、まゆにとっては平気の平左なのだが…。