劇場公開日 2015年8月8日

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「名脚本家=名演出家に非ず」この国の空 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0名脚本家=名演出家に非ず

2016年2月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

難しい

名脚本家・荒井晴彦の18年振りの監督作。
終戦間近の東京、母と暮らす19歳の少女が、妻子を疎開させた隣家の男性の身の回りの世話をする内、“女”を目覚めさせていく。

キネマ旬報ベストテン第7位、映画芸術ベストテン第1位など、高く評価された名作なんだろうけど、う~ん、ちょっと自分には合わなかったかな…。

美術セットにカメラワーク、台詞回しに至るまで、小津映画を彷彿。
往年の名画を見ているようなタッチは悪くない。
直接的な戦争描写は描かず、庶民の姿を通した“反戦映画”である事もいい。
が、如何せん、淡々とし過ぎて、盛り上がりに欠ける。

オマージュを捧げたであろう小津作品はその代表的作品だが、やはり全然違う。
小津映画は静かに染み入るものばかりであった。
往年の邦画のような抑えた演出が仇となり、古臭さを感じてしまう。
台詞なども美しい日本語を念頭に置いたのだろうが、何と言うか、教科書的と言うか、生きた言葉を感じず、どうもぎこちない違和感が残ってしまった。
三人の女優は名演を披露する傍ら、長谷川博己のみ喋り方も含め現代的で浮いてしまっている。

言うまでもなく、二階堂ふみに魅せられる。
おそらくノーメイク、垢抜けない風貌から、男と関係を持ち、徐々に女の色を滲ませる艶かしさと演技力はもう名女優。
ただ、艶かしいというだけなので、「地獄でなぜ悪い」のようなムンムンとしたエロス、「私の男」のような小悪魔的魅力には乏しい。

近大