劇場公開日 2015年1月9日

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「より救いの無い状況が使い古された冒険活劇に新鮮味を与えていた作品。」トラッシュ! この街が輝く日まで Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0より救いの無い状況が使い古された冒険活劇に新鮮味を与えていた作品。

2015年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

良かった。

粗筋を読む限り、使い古された冒険活劇。
正義感溢れる少年達と欲に塗れた大人達の対決。
少年達は知恵と勇気を振り絞って悪と対峙し勝利する。
条件反射的な爽快感はあるものの新鮮味は無い。
作品への期待感は正直低めでしたが。
…良い意味で裏切られました。

話に新鮮味を与えていたのが、リオデジャネイロのリアル感。
そして、それに応じた登場人物達の言動。満ち溢れた生命力。

作中で描かれるリオデジャネイロの貧富の差。
主人公である少年達が住むゴミ集積所は焼却施設も無く単なるゴミ山。
そのゴミ山近くに勝手に家を建て住み、ゴミを拾い生活する貧しい人々。
作中では置物のような扱いでしたが公共交通機関を利用する中間層の人々。
そして美しい海に面したリゾート地の大豪邸に住む人々。
電車移動可能な範囲で、これだけ格差が生まれている状況に驚かされます。

そして極端な格差社会に蔓延する人間の腐敗。
力を持つ富裕層は自らの地位を維持するため汚職/不正の道を直走る。
取り締まるべき国家権力も金に操られ、強い者の意向で弱い者を蹂躙する。
日々の生活に困窮する貧困層の中でも差別は根強く、弱い者が更に弱い者を差別する。

そんな社会の中で主人公である少年達は自らの正義を信じて行動する。
少年達が対峙する対象はより悪く、より強大で、より実行力がある。
周りの大人達が無力であることも相まって、救いの無い状況での彼等の覚悟と行動力にグッときました。
また少年達自身も決して清廉潔白ではない点にも好感を持ちました。

惜しむらくは終盤の展開。
散々見せられた厳しい状況に反した帰結。
後味の悪い結末を望んでいた訳では無いですが。
風呂敷の畳み方があまりにご都合主義的、無邪気に感じた点は残念でした。

登場人物と舞台のリアルさが使い古された冒険活劇に新鮮味を与えている本作。

プロローグの緊迫した場面が作中どのように繋がるか。
徐々に明らかになる財布の謎解きと共に作品の構造も楽しめました。
帰結の無邪気さも含めて安心して観れる作品だと思います。

オススメです。

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Opportunity Cost