「テッドは「考える葦である」のかなぁ?」テッド2 ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)
テッドは「考える葦である」のかなぁ?
「全米が震撼!!」 ズンズンッ!!!(←ジョーズ系の効果音)
「R15+指定!!」 ドスンッ !!!(←ジュラシック・パーク系の効果音)
「日本中をトリコにした!!」(←スターウォーズ系のファンファーレ)
あの世界一ダメな、もふもふテディベアが、帰って来ました!!
テッドは職場の同僚でもある、あのタミ・リンちゃんとついに結婚。ちなみに一作目の出会いのシーンでは、テッドが結構、ダーティーでワイルドにアタックしてましたね。(ちなみにタミ・リンちゃん、ナニのアレはNGらしいです、すいません、大人の下世話な話で……)
映画は冒頭、ふたりの幸せな結婚式シーンから始まります。神父役は、あのB級ヒーロー、我らがフラッシュ・ゴードン(サム・J・ジョーンズ)が務めます。引き続きオープニングクレジットへ突入。ここはブロードウェイのレビュー仕立て。今回のテッドはとってもゴージャスなんです。
テッドと男女のダンサーたちが、見事なダンスを披露してくれます。テッドは蝶ネクタイにタキシード。彼、いろんな服がよく似合うんですね。本作ではテッドがいろんな格好で現れるので(スキューバダイビングとか)衣装にも注目ですよ。
さて、結婚から1年も経つと、テッドとタミ・リンは夫婦ゲンカの毎日。どうしたら二人、仲良く暮らせるのか?
職場仲間のアドバイスは「子供を持てばいいのよ」と簡単明瞭。
そうだよ、それだ!! タミ・リン、おれたち子供を持とうよ!
ということで、テッドとタミ・リン、二人に夢と目標ができました。
ところが、そんな二人に州政府から一通の通知が。
「テッドは人間とは認められない、ゆえに二人の結婚も成立しない、更にはテッドが子供を持つことも許されない」というのです。
テッドは長年連れ添った雷兄弟(サンダーバディ)の親友ジョン(マーク・ウォールバーグ)に相談。
「困った時は弁護士さ」とジョンとテッドたちは弁護士事務所へ向かいます。そこで彼らの担当になったのが、若干26歳のおねーちゃん弁護士、サマンサ(アマンダ・セイフライド)
法廷で「アナ雪」の「レット・イット・ゴー」なんか歌わないでね、とテッドに釘を刺されながら、頼りない新人弁護士サマンサとテッドたちは「命ある、クマのぬいぐるみ、テッドに人権を!」と法廷に乗り込んでゆくのです。
今回の「テッド2」では、ガッツリ、法廷シーンが描かれるんですね。
観ている途中から、あれ、これって、以外に、とんでもなくシリアスな命題を観客に吹っ掛けて来てるんじゃないの? とおもいました。
テッドは僕たち観客に問いかけてくるのです。
「オレってモノなの? それとも人間?」
本作はセス・マクファーレン監督が仕掛けた、ある意味、大変、哲学的な、思考実験映画なのかもしれませんよ。
テッドはクリスマスの夜、神様から奇跡の命を与えられました。彼は人間と会話ができます。もちろん喜怒哀楽だってある。何より、人を愛することができるのです。しかしそのルックスは……モッコモコの、綿を詰められた、クマのぬいぐるみです。しかも、元はと言えば、工場で「生産された」ぬいぐるみでした。
さて、この場合「テッド」には、人間のような「基本的人権」は認められるでしょうか? ということです。
例えば、日本ではペットを傷つけると「器物損壊罪」として罰せられます。
飼い主の愛情を注いだ、家族以上の存在であるペット。彼らは日本では「モノ」として扱われてしまうのです。彼らペットや動物たちには、自然発生的な「生きる権利」や生き物としての「尊厳」は存在しないのでしょうか?
さて、本作「テッド2」では、アメリカ合衆国における「黒人奴隷」の問題が引用されています。
かつて彼らが、故郷であるアフリカ大陸から船で「輸入」されたとき、人間としては扱われなかったのです。
黒人奴隷は「モノ」として扱われたことが、法廷の記録として厳然として残っていることを、本作では示しています。
黒人、および有色人種は、凄惨で、血塗られた歴史を乗り越えて「公民権」を獲得します。
そういった、合衆国の歴史や背景を下敷きにして、本作は描かれております。
これら法廷シーンでは、おバカ映画の体裁であるにもかかわらず、笑いの要素は極力省かれた演出になっています。
とてもじゃないが、茶化して笑いを取る場面ではないんですね。
さあ、法廷で、テッドは人間であると証明できるんでしょうか?
そして命を宿した、奇跡のテディベアに、基本的人権は認められるんでしょうか? 本作の大きな見どころですね。
そのための配役が素晴らしい。
なんと、本作「テッド2」には、超大物俳優、モーガン・フリーマン氏が弁護士役で出演。テッドと夢の共演となりました。
また、リーアム・ニースン氏が、苦みばしったハードボイルドな演技で、カメオ出演しているのも必見。彼は、別のアクション映画の世界からやってきた、主人公そのまんまのノリで、この「テッド2」の世界に乱入してきます。切羽詰まった、ヒリヒリするような表情がよけい笑えます。
なお、本作はR15+指定なので、良い子の皆さんは、もうちょっと、ガマンしましょうね。