劇場公開日 2015年1月9日

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96時間 レクイエム : 映画評論・批評

2015年1月6日更新

2015年1月9日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

追って追われて、本拠地LAでシャープに暴れ回る最終章!

俳優リーアム・ニーソンにとって「96時間」は間違いなくキャリアのターニングポイントとなった作品である。同シリーズは00年代に入り「師匠」的な役ばかりが続いていた彼を大衆目線へと引き戻すのに成功した。ここでの彼は情け容赦など微塵もない。家族を救うために暴走し、「必要ならエッフェル塔を破壊する」とさえ豪語する。そのストレートな父親像に我々は心底しびれたのだ。

そんなシリーズも遂に最終章。と、この物語が序盤から悲痛の極みを見せる。なにしろこれまで共にピンチを乗り越えてきた元妻レノーア(フェムケ・ヤンセン)が何者かに殺されるという、シリーズものとしては“レギュラー殺し”の禁じ手とも言える展開で幕を開けるのだ。そして主人公ブライアン(リーアム・ニーソン)は、この事件の容疑者として追われる立場へ−−−。とはいえこの男にとって警察の包囲網など取るに足らない。彼はこれまで同様に特殊技能を駆使し、なおかつ仲間の助けを借りながら、見えざる敵を炙り出して叩きのめすための戦いを仕掛けていくことになる。

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監督は2作目からの続投となるオリビエ・メガトン。前作ではやや粗削り過ぎる構成が賛否を分けたが、今回はドラマとアクションを丁寧に醸成する姿勢が貫かれていて好感が持てる。ブライアンの人間性を物語の中心に据えるためにも、決して安易なVFXや爆発シーンには頼らず、細部に抑制を効かせながら徐々に全体のボルテージを高めていく。そこに勝因がある。

また“追跡者”としてフォレスト・ウィテカーを起用したのも気が利いている。ロサンゼルス市警の切れ者として登場するその視点によって、本作は思いがけず映画「逃亡者」的なスタイルを内包。敵に向かって一直線なブライアンのシャープな動線に加え、それをフォローアップする複数の動線が生まれることで語り口はより多角的となった。これまで紡いできた閉じた世界をあえてワイドに開いて見せたことこそ本作の美学、そして何よりの収穫と言えるだろう。

牛津厚信

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