フレンチアルプスで起きたことのレビュー・感想・評価
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男の愚かさ、女のリアル
いや、人間どこに落とし穴があるか分からない。
仕事も家庭も順風満帆だった男が、リゾート地におけるたった一つの出来事で転落していく様、グッと胃にくる。
日常世界において、見栄を張り、誇張し、着膨れしている自分自身を見ているようで、いたたまれないのだ。
昨日まで手にしていたもの、当たり前の、所与のものとしてあった生活が、一瞬にして零れ落ちてしまう恐怖。
拠り所を失うことに人は耐え難い苦痛を感じるのだ。ならば、最初から独りでいれば、苦痛を感じることもないのに。
独りでは生き難い人間の業。
誰もきみを守らない
『フレンチアルプスで起きたこと』おもしろかった。問題の端緒となる夫の行動だけではなく、全体を通して家族を"守れる"選択なんて夫も妻もできない。始終自分勝手に振舞って子どもを傷つけているのに気がつかなくて、それなのに家族に戻った気になっているのを、不穏なコミカルタッチで描いていた
旦那針のむしろ
ちょっとしたボタンの掛け違いから、絶えず奥さんが"これでもか〜"とばかりに虐めるから、旦那立つ瀬なし。いや"針のむしろ"状態が延々と続きます。
この映画が面白いのは。前半に「裏切られた!」とゆう気持ちが強く、人知れず苦悩を重ねていた奥さんが、旦那を執拗に責め立てる事で生まれる絶望感。だが後半になるにつれて、今度は旦那に感染して行き、いつしかその立場が逆転して行くところ。
観ているこちらとしては、「一体全体どうなっちゃってるんだよ〜!」状態が続くのですが。そこに至るまでに、かなり苛々を募らせていた観客の気持ちを、旦那が醜態を晒す事で喜劇性が一気に加速。しばしば失笑させる事で笑いが生まれて行き、観客の緊張感を解す事に繋がっています。
特に最後の手段とばかりに、旦那が"奥の手"で奥さんの機嫌を直そうとしますが、(本編中に描写は無し)奥さん無表情。旦那は唖然。
いやいや思わず笑ってしまいました(笑)
実は映画の前半部分から、イングマール・ベルイマンの『ある結婚の風景』を思い出しながら画面を見つめていました。
ちょっとしたボタンの掛け違いから口論に発展し、どんどんと夫婦仲が悪くなって行く下りや。中盤で友人のカップルが登場しては、その2人にもその余波が及び、口論になりかかる辺り。
「あ!これベルイマンぽいなあ〜」と、思わず当時に観た時の感覚を思い出していました。
最後に『ミスト』の様な絶望的な終わり方をさせるのか?と思わせたり、あのカップルが初めて登場する場面で実は…とゆう絡ませ方を含めて。この監督は、観客の思惑を度々すかして来る辺り、かなりしたたかさを感じますね。
(2015年7月6日/ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター1)
むちゃくちゃあるよな…
旅先でのトラブルってほんとこうなりやすい。どの家族にもはらんでる危険で、私自身もこうなった時どういう態度とるかな。と考えさせられる。
何度も描かれてきた家族ドラマだと思うけれど、独特の雰囲気と、ちょっとだけ予想外な展開に失笑というか、呆れるというか…
去年のTIFFで観たのだけれど、また観たいな。個人的にはツーリスト、方がしっくりくる。
人の本質を描いた深い作品
フレンチアルプスにスキー・バカンスにやってきたスウェーデン人一家に巻き起こる家庭不和の危機。第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門・審査員賞受賞。
いやぁ、なんでこう言う出来事を映画で描こうと思ったんですかね?そう思わせられるから、カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門の審査員賞を受賞したんだと思いますが。それにしても、シュールというか、ブラックというか・・・。人間の本質を描いた映画と言って過言ではないです。
雪崩に巻き込まれかけることは、そうそう無いと思いますが、ふとした何気ない言動が、周囲に波紋を広げて、人間関係が悪化していくということ。そう言う意味で、他人事では無いなとも思いました。そしてそれは、自分たち家族だけではなく、何故か周囲に友人知人たちにも伝搬していくなんてね、なんか、ありそうな感じに思えました。
気になったのが、エバ。彼女の危機感知感性は、この物語の一つの線になっているのでは無いでしょうか?最初の雪崩、物語終盤のゲレンデでの出来事、そして最後のバスでの出来事。そう言う意味では、あの後バスに何かが起きるのか?と思っていたんですが、映画の中では何も起きませんでしたね。
人の本性を描いたこの作品。深いです。
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