「「男はいざとなったら女を守る」なんて嘘っぱち」フレンチアルプスで起きたこと Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
「男はいざとなったら女を守る」なんて嘘っぱち
いまだに阪神大震災のとき、母が咄嗟に横で寝てた自分にかぶさって守ってくれたことを思い出す。親が咄嗟に子供を守ってくれたことはいつまでも覚えているものだ。
その逆もしかり。
人間だれしも非常時に思いがけず利己的な行動をとってしまうことはあるだろうが、トマスもなかったことにしたりしないでさっさと謝ればよかったのだ。ぐだぐだ「君の見方は異なる」なんて言い訳するから妻が証拠の動画まで持ち出す羽目になる。
この映画を見てトマスが可哀そうとかそこまで責めることないとかトマスを擁護するようなら、いざってときにトマスのように自分だけ逃げるか自分の失敗を認めない男だと思う。
両親がそんな感じなので子供たち…もともと家族サービスしてあげてる父親「に」つきあってあげてる感満載だった2人も無言になり親とろくに口を利かなくなる。そりゃそうだ。祝って時に助けてくれない親を見て失望しないわけがない。
終いにはトマスは妻と子の前で「こんな自分は嫌だ、ぴえん(´;ω;`)」と大声でみっともなく泣く。男は泣くなとは言わないがその理由で泣くのはどうよ。そして子供たちに慰められる始末。子は鎹というか潤滑剤というか親のメンタルヤングケアラーまっしぐらだ。
結局、翌日トマスが妻を救出して(おそらくは妻の一芝居)何となく問題は棚上げされる。それにしても子供二人を置き去りはどうなのか。夫婦二人はなんとなく仲直りしたっぽいが子供たちが抱える親に対する不信感はそのままどころかむしろ増してるんじゃないか。
…と見てて嫌~~~な感じになる映画だが、その嫌~~~な感じがなんともリアリティあふれていてこの監督はやはり天才だと思うのだ。
「男はいざとなったら女を守る、だから黙ってついてこい」のように偉ぶってる男にまず見せて反応を見せたい映画No.1である。場合によってはマッツたちのように議論になって喧嘩になりかけるかもしれないが、お互いの本音がよくわかるという意味では、結婚前の相手を見極める試金石に良いかもしれない。結果として別れることになっても別れるべき相手がわかるならそれでよいだろう。