「小心と鈍重。夫婦おもろきかな。but!結婚や家庭への憧れ、そして自己肯定感まで、がらがらと崩落する恐れw」フレンチアルプスで起きたこと きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
小心と鈍重。夫婦おもろきかな。but!結婚や家庭への憧れ、そして自己肯定感まで、がらがらと崩落する恐れw
富士山での大崩落を覚えておられるだろうか
1980年の8月、夏山登山のハイカーの群れを 大量の落石が襲った。12名が死亡、29名が負傷の惨事だ。
「富士山大規模落石事故」、
震撼のWikipedia。
ところが
あの最中に、あのパニック状況を切り抜けた一家があったのだと 後日話を聞いた、
他の登山客は坂道を駆け下って下へ逃げたのだが、(本能だろう。当然だ。)、結果として背後から襲い来る1~2mの巨石50個に軒並みやられてしまった中で、
その家族は違ったのだと。⇒
その父親はこうだったのだ、
彼は富士の頂上に向かって静かに正対する。
上方をまっすぐに見据えて立ち、自分の後ろに真一列に妻子を並ばせて、斜面をふっ飛んで来る岩石を
父親が
【 右っ!→ → 】
【 ← ←左っ! 】と、
よける方向を手で指示し号令をしながら、家族縦一列で右へ左へ横っ飛びを続けて、
とうとう落石のすべてを避け切ったというのである。
嗚呼・・自分ならばそのように咄嗟に機転を利かせることが出来ただろうかと、そのニュースを震えながら聞いたものだった。(まだ独身だったけれど)。
誠にあっぱれだ。
あの時妻と子は、恐ろしい落石をではなく、父親の頼もしい大きな背中だけを見て難を逃れたのだ。
感服。
いやまさにこれは男の鑑、父親像の誉れ。
輝ける夫の有り様だなぁと、僕は深く嘆息したものだ。
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残念ながらこの映画は・・辛い結果なんです。
お父さんをそこまで苛めるなよ!と擁護してやりたい(笑)
夫の沽券、形無しです、
父ちゃんの威厳も瓦解。
哀れ、雪崩れと共に崩れ去った楽しいはずのバカンス。
一体何がいけなかったのか、
女には女語でしゃべらなきゃいけなかったんです。
「ごめんよー、恐かったね、雪崩が恐くって逃げちゃったんだ」。
「君はあの時どうしてあんなに強くあれたの?」
「みっともなくて自分が惨めだ。赦してね」。
・・その時にその場で、いち早くこう言えれば良かったんだけど。
男はプライドが邪魔をして自分の失敗を認めようとしないし、ましてや自分の弱点をシェアすることに慣れていない。訓練を受けていない。相手の立場になって謝ることが一番の不得手。
逆に
「泣くな」
「強くなきゃ男じゃない」
「結果を出せない者は落伍者だ」と親からも社会からも小さい時から躾られてきたから。
だから男の自殺率は女とは比べものにならないほど高い。7割が男性。女性の2.4倍男は死ぬ。
責められて、お前は失格者だと指摘されると、彼らは呆気なく心が折れて死ぬのだ。
いやー、
ヘッドホンを着けてDVDで鑑賞しましたが、ホテルの吹き抜けに面している部屋の前のシーンでは、遠くダンスラウンジから聞こえてくるバスドラム?の音が、まんまサブリミナル。=早鐘の動悸のようでたまらんかったです。
あとビバルディもね、しつこく不穏感を煽りすぎ。
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男の弱点・急所を突く、お見事な脚本ではありました。
男なら誰しも思い当たる昔の脛のキズ。忘れてしまいたい過去の失態や失言を、ここまで辛辣に暴くとか・・
“古傷”を切開されたい殊勝な方にはオススメかも。
しかし
あー、やれやれ。疲れた。
ここまで男の恥部を晒すとか、逆に反感を買うでしょうな。
なお、個人的にはホテルの清掃員の男(たびたび登場)にツボりました。
似ているので監督・脚本のリューベン・オストルンド本人かもしれませんね。
楽曲提供のアントニオ・ビバルディ氏は、16c .のカトリックの司祭です。
「君子危うきを避く」という賢明なシステムに守られ、結婚を避け“清貧”を貫く神父さんとしては、妻も子も艱難もなかった訳ですが、300年後にこの映画に採用された自作に震え上がっていることでしょう。
映画の終結は
ハッピーエンドではなかったです。
ショボくれたまま台詞も与えられずに空手で徒歩で下山するトマスと、娘ヴェラを夫にではなくひげ面の男に託し、
バスの運転手男にはダメ出しを通告して窮地を脱し、
「強い女」になって帰宅するエバの雄姿で幕なのでした。
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口閉ざす
妻より怖いものはなし
口開く
妻は記憶の宝庫なり
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で、
【この映画のコンセプトは何なのか???】、
受賞多数の“好評”の理由はどこにあるのか、
3度ほど鑑賞して探ってみた。腹立ったので。
男の「分析者」としての精神構造と、
女の「共感者」としての精神構造+「母性本能」と、
この対立するすれ違いは永遠のものかもしれない。そこを暴いた作品ではあるのだが
でももしも《自己啓発のためのカウンセリング映画》にしたかったのであれば「ケーススタディ用の5分の短編」で用をなしたはず。
ブラック認定ですね。
鑑賞者の男と女にとって、この映画からポジティブな有益性を得られるとは余り思えなかった。
後味が悪い。
破壊だけが残る。
悪趣味な作品だと思った。
きりんさん
共感ありがとうございます。
3回ご覧になられたのですか?
すごいですね。
富士山落石事故の際の、あるお父さんの行動・・・
そんな方がいらしたんですか?
感動しました。
お父さんの鑑ですね。
この映画のお父さんはちょっと理解出来ませんでした。
ただ映画的にはもう少しブラックの方が楽しめるのかとも思いました。
批評家に高評価・・・分からないものですね。
今晩は
今作が駄目という事は、リューベン・オストランド監督の不条理且つ人間の人に見せたくない部分を露わにした作品が苦手という事でしょうか。
毒を食らわば皿までと言いますが、私が劇場で観た物凄ーく居心地の悪かった、黒板を爪で引っ掻く音を延々と聞かされるような「ザ・スクエア/思いやりの聖域」などは、如何でしょうか!!