さよなら、人類のレビュー・感想・評価
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シュールなコント集
「ホモサピエンスの涙」がとても興味深い作品だったのでこちらを鑑賞。ワンシーンワンカットはこの監督共通のスタイル。基本群像劇だが本作はパーティーグッズの販売員二人を主軸にコントが展開される。小さなコントから大掛かりなコントまで。
まずこの二人が販売してるのが吸血鬼の牙、笑い袋、そして歯抜けおやじのマスクと、これら下らない商品を大の大人がまじめに売り込んでる姿が笑える。作品全般がシュールで脱力系の笑いで満ちている。はまる人にははまるし、私ははまってしまった。絵を見てるだけでおかしくなる。もうこの監督の虜。
大北方戦争のスェーデン王のくだりはすごくお金かかってる。結構笑えるコントから笑えないコントまで、はては人類の蛮行まで描いてる。
作品終盤で販売員の一人が見た夢のくだりは痛烈。黒人奴隷を巨大な筒状の楽器のようなものに入れて火をつける。中の奴隷が熱から逃れようとして鼠のように筒を転がす。それを高齢の白人の紳士淑女たちがお酒を飲みながらクラシックを聴くかのように堪能する。まさに人類が犯してきた歴史的蛮行を想起させる。
些細な人間の行いから歴史的蛮行まで一気に描き、人間という存在を深い洞察をもって描いた。
ラストは今日は水曜日か木曜日かとバスを待つ人々のとりとめもない会話で終わる。
やはりこの監督が映画で表現しようとしてるものは一貫して人間の愚かさと尊さなんだなとあらためて感じた。
コックリさん
レンタル110
観たいリストに入っていた一作 リストに入れた経緯不明
予告編とかを観たのかも ベネチアだかで賞を獲っているというし
前半は絶妙な間で笑えた 踊りの先生が生徒にする悪戯とか
後半はちと難解でついて行けずコックリさん
世の皆さんのレビューで補完したい
変な映画
大体のシーンが面白いわけではないが観ていて楽しくはある。
各シーンにおいて固定アングルで絵画的に画面が構成されており、そこで登場人物たちが何をするかといえば大したことはしない。そこに妙な哀愁がある。
騎兵隊がバーにやってくるシーンは面白かった。
シュールだけどほんわか
爆笑はしないけどずっとニヤニヤしてられる。
登場人物が絶対笑わない。
「元気そうでなにより」というセリフ、
そして「また明日」という最後のメッセージと、
『さよなら、人類』というタイトルの組合せもシュール。
どうしようもないこの人類ってやつのいとおしさ。
構図フェチ
特徴的な構図がオシャレと人気の監督にウェス・アンダーソンが居るが、本作のロイ・アンダーソンも構図が特徴的。ウェスを突き詰め掘り下げ余分なものを削いでいくとロイになる感じ(商業的にはその余分なものも必要不可欠なのだろうが…)。
ウェス・アンダーソンの構図は箱庭的な閉塞感が漂うが、ロイ・アンダーソンのそれは、どこかに窓がありドアがあり部屋の外にも世界があることを思い出させ、風通しがいい。
澄んで明晰な構図。
「動く絵画」とでも言ったら良いのか。
「思考するアングル」とでも言ったら良いのか。
いや、そんな堅苦しいことではなく。
構図そのものにカタルシスがあり、恍惚があり。
線路や乳母車、フラメンコのシーンなどなど…。
めくるめく遠近法や、マジカルな配置。まさに愉悦。
小賢しい解釈など付けずに、ただただ浴びていたい感じ。
語れば語るほどに、この愉しみからかけ離れてしまうもどかしさ。
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1シーン1カット、固定カメラ、全てスタジオセット撮影の本作。いわゆる書割との合成画も多用されている。外のシーンなどは、えっこれもセットなの?という驚きと、遠近が実際と違う奇妙な味わいがある。
アーティスティックと評されることが多い作風だが、昔の邦画(白黒時代)にも、ちょっと似ているのではないか。
昔の邦画は、予算とスケジュールの兼合いでスタジオ撮影のものが結構多い(成瀬監督などは時間がよめないロケが大嫌いだったという)。そこで多用されたのが書割との合成画であり、狭いセットに奥行きをもたせるアングルだった。それら明晰にコントロールされた美しい構図を、ロイ・アンダーソンは彷彿とさせる。
新鮮でありながら、かつて歩いてきた道をさかのぼっていくような懐かしい構図。
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構図に並べられたもの。
(一見シュールであるが、訳のワカランことをやって煙に巻くというよりは、明確に構成された映画のように思う)。
映画内で、ひょいと時代をワープしたりする(現代のカフェに突然18世紀の国王が現れたりする)。
今と昔が同時に並び、人の優しさと残酷さも同時に並んでいる。
オルガンのシーンなどはこの上も無く冷徹で、ああロイ・アンダーソンは根っからのペシミストだなあと思ったりもする。
いやこの「冷徹な眼」が通づる世界が何処かにある筈(映画の意図が判る判らないといった小さい次元の話ではなく)だと、人間を信じているオプティミストなのかもしれない。
何かを真剣に「思考」し、それを「言葉」ではなく「映像」で表現する…非常に本質的な映画だったように思う。
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追記:
「ジャック・タチ meets デヴィット・リンチ」
「スラップスティックなベルイマン」
「哲学するモンティ・パイソン」
画家ブリューゲルなどなど。
いろんなものに例えられているロイ・アンダーソンであるが。
私は、アンリ・ルソーと、「キスおばちゃん(by松本人志)」も付け加えておきたい。いろんなものを内包し、それでいて誰とも違う。天晴れ。
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