劇場公開日 2019年10月18日

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「ブルースが似合う町」解放区 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ブルースが似合う町

2020年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 最初はフェイク・ドキュメンタリーのように「引き籠り中年・ヒロシと母親の感動の対面!」みたいな雰囲気だったのだが、徐々に様相が変わってくる。ADとしてこき使われていた須山(太田信吾、監督兼)が自ら提案した企画が通りそうになったため、単身大阪へと向かい、社会復帰とアルバイトを兼ねて本山ヒロシを誘い出す。

 最初は須山をこき使ってるプロデューサーがクズだと感じるのですが、実は一番のクズは須山本人だった。この性格の変わり様の描き方は見事。ヒロシを更生させるどころか、ヒロシに金を出させて搾取する側に。ただし、西成地区の安ホテルということもあり、そんなに大金ではない。資本主義の搾取する側、される側というのは登場するブルースバンドでも歌われていて、反原発を思いっきり叫んでもいた。

 人間落ちるところまで落ちる。何かしらのエサが与えられれば詐欺にも簡単に引っ掛かり、さらに自分自身も詐欺師へと変貌する。腐った世の中の縮図のような人間関係をも描きつつ、最も人間らしいのはヒロシだったと気づかせる展開。ちょっと不満な点は、解体業者の日当1万円がそのまま支払われたのか分からなかったところ。まぁ、空白の領収書だったから、逆に2万円くらいだったのかもしれません・・・

 ドキュメンタリー映画を取るという気概だけは見せてくれる須山という男。西成とか若者のリアルを撮りたいんだというプライドだけ高くて世間を知らない男。結局、女やヤクといった誘惑に負けてしまい、どん底へと落ちていく。同棲していた女にも見放されるが、今後どうやって生き延びるのかも興味深い。

kossy