劇場公開日 2017年1月7日

「芸術への投資と想像力の鍛錬を促す野心作だ。」壊れた心 MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0芸術への投資と想像力の鍛錬を促す野心作だ。

2017年1月8日
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鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

ストーリー性が希薄、セリフは皆無、オール・フィリピンロケ、等々の理由から配給会社が付かず、クラウドファンディングによって日本公開が決定したという。しかし、愛に取り込まれたマフィアのボスが放った殺し屋が、肝心の女と恋の逃避行へと舵を切るプロセスを、監督(&俳優)が操るハンディカムがただゆらゆらと追い続ける物語は、頭より心を刺激して、何とも言えない映像的快楽をもたらしてくれる。昨今の説明過多な日本映画とは対極にある作品は、同時に、色彩に溢れた頽廃都市、マニラの極彩色を映し出してカラフルこの上ない。プリントのシャツとパンツをだらしなく着た浅野忠信(本作でもセクシーだ)が、ピンクとブルーに塗り分けられた墓地に迷い込む場面など、めくるめく万華鏡のようではないか!?そして、それらが完璧に計算し尽くされた演出と分かる時、作り手たちの高いセンスに舌を巻く。芸術への投資と想像力の鍛錬を促す野心作だ。

清藤秀人