「もっと注目されるべき意欲的な映像作品」壊れた心 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと注目されるべき意欲的な映像作品
浅野忠信が演じる殺し屋がマフィアのボスの女と愛し合い、逃避行へ。筋はシンプルだが、手法がユニークだ。
台詞を排し、音楽と詩の朗読で感情を伝え、ムードを牽引する。撮影監督はお馴染みのクリストファー・ドイルが務めたが、浅野自身も腕のギプスにはめたGoProのアクションカムで狭い路地を突っ走る姿を「自撮り」する。追っ手から逃げているのに何やってんだという話だが、この不自然な状況での自撮り映像が意外とリアル。こんなショットを放り込んでくるフィリピンのケビン・デ・ラ・クルス監督、要注目の才人だ。
監督は劇中曲の多くを作曲し、ピアニスト役で出演も。浅野もまた、劇中で打楽器やギターを奏で、吹き替えでなく演奏がそのまま使われている。2人が音楽家としても通じ合う部分があったのかも。ノワールという言葉で評される本作だが、裏社会で愛を貫く男女の潔さ、闇を越えた先の輝きが心にぬくもりを残してくれる。
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