薄氷の殺人のレビュー・感想・評価
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余白と赤
余白のとり方が非常に印象的なノワールもの。
なんで踊ったの?なんで笑ったの?と
さまざまな解釈ができるところはやっぱりカルト的な人気を呼ぶところで、
それは作品全体としてのクオリティが高いからこそなんだなあと。
ただバラバラ殺人のミステリーって意味では薄味だったと思う。
でもまぁ、一番先に感想として出てくるのはやっぱり
画面を隔てた見る側ですら、ぐっと引き付ける魅力をたたえたグイ・ルンメイ。
ずっと泣いてるようにも見える表情だとか、少年のように華奢なスタイルだとか
そんで大きな転換点を迎える場面での、はっとさせられる”赤”の使い方とか。
そういや中国は赤色を大切にする文化だったっけ。
主人公はジャンなんだけど、それ以上に主役は彼女だよと言わざるを得ない。
前述のミステリー要素の部分で正直 期待したほどではなかったけど、
見てよかったと思える作品だった。
中国北部の庶民的な視点から観た映像は素晴らしいが。。。
斎藤工さんが映画工房で薦めていた『鵞鳥湖の夜』の予習がてらに観た。
中国映画にあまりなじみがなかったので、最初登場人物の名前がごっちゃになって、
何度か戻って見返してしまった。
全体としては、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』や『母なる証明』から極力セリフをカットしたような
映画という印象を受けた。セリフが少ない分、中国北部の地方都市の庶民的な視点で撮影した映像がとても良かった。寒さも凄く伝わってきた。
ストーリー全体としては、ジャン刑事が事件を追う緊迫感は伝わってきたもの、
最後がちょっと残念な終わり方だったかな、という感じだった。
ただ見ごたえはそこそこあったので、『鵞鳥湖の夜』も劇場で見ようと思う。
観た
シネマカリテ、全席制に。久しぶりに、隣の人がいる状態で観たわ。緊張。
さて、家族が絶賛する本作を、俺も、ようやく観た。英語題は「黒炭、薄氷」(black coal .thin ice)、中国原題は、「白日の花火」なんだね。英語も日本語もなぜ変えたんだろう?
面白く、テンポよく観られたけど、あんま、わかんなかったわ。容疑者の兄弟が射殺されるシーンは印象強かったけど。ラストのダンスも爆竹も、違和感なく観たけれど、「あれ、何?」だわ。
家族に聞いた。「にっちもさっちもいかなくてなっちゃって、踊ったんじゃないの?」
をを、そういうことか。いいじゃん、それ。俺って、まったくそういうことに気づかないなあ。教科書人間かよ、ってちょっと自己批判的に悲しくてなったりして、そこはアジア映画っぽいんじゃない、と思ったりして。
>ベルリン映画祭:通称ベルリーナ。社会派の作品が集まる傾向がある。また、近年は新人監督の発掘に力を注いでいる。金熊賞は、最高の賞で映画賞にあたる。(以上、Wikipedia より)
中国の NOW を描いたってところが高く評価されたのかな。二転三転もちゃんとしてるし、主人公の「うだつがあがらない」の、全編通して、見事な表現!
youtube での宇多丸さんの語りを聞いたら、もう一度観たくなりました。
私の理解力のせいか、イマイチ楽しめず
映画マニアとしても有名なライムスターの宇多丸さんが「面白い」と絶賛されていた映画。前々から観たいと思っていましたが、ようやくの鑑賞です。内容については何も知らない状態での鑑賞でした。
結論から申し上げますと、正直あんまり楽しめなかったです。なかなか考えさせられるシーンとか美しい映像描写とか、「おぉ。」と感嘆を漏らすような場面もありつつ、しかしながらイマイチストーリーも理解できなかったし、登場人物の心理も分からないものが多かったです。しかしこれは映画の質が低いとかでは決してなく、単純に私の理解力不足のように感じます。全体的に台詞が少なく、登場人物たちの表情や仕草から心情を読み解く能力が求められます。
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1999年、中国で起こったバラバラ殺人事件。広い範囲に点在する15箇所の石炭工場で、次々に遺体の一部が発見されるという奇妙な事件だった。刑事のジャンが捜査を担当したが、容疑者が警察との銃撃戦で死んでしまい、捜査の手がかりが無くなってしまった。5年後、警察を辞めて警備員として働いていたジャンだったが、かつての同僚と久々に会った際に5年前のバラバラ殺人事件と似た事件の捜査を行っていると聞かされる。事件の容疑者である美しき未亡人のウーに接近し独自に捜査を始めるが、やがてジャンはウーに惹かれてゆき……。
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人物同士の関係性や心情や葛藤にフォーカスを置いた、ヒューマンドラマ的なサスペンス映画といった印象。
とにかく役者陣の演技が素晴らしかった。主演のリャオ・ファンはベルリン国際映画祭で最優秀男優賞を取っただけあって圧巻の体当たり演技。美しき未亡人を演じるグイ・ルンメイは、美しくて物憂げだけど瞳の奥が濁っているような、言葉では表現できない役を見事に演じきっていたように見えます。
食事描写も良かった。映画の中における食事はキャラクターの人間性を見ることができる重要な要素のように感じます。ジャンが食事をする描写が作中に3回くらいありましたが、そのどれも肉まんに似たような点心と、追加でスープやおかゆ。非常に質素なものです。
中国映画は久しぶり。寝坊して最初の7-8分を見逃したのは残念だった...
見終わってぐったり
白昼の花火
ロケーションの良さ
何度もみたくなる作品
画面から伝わる中国の現在
邦題が…
立派なファムファタール
干洗の女
エンドロールにジャジャンクーやトニーレインズの名前が見えるのは伊達じゃないけど、やっぱりベルリンは信用ならない。確かに寒い感じは凄くよいし、ヒロインも良い感じだし、美容室のモヒカンの容疑者もシャツをまくって腹見せてる金髪の不良も、ピンクの照明のチープさも、ダンスホールの感じも、そこでかかってるエレクトロ歌謡も、スケートリンクも、観覧車も、登場人物たちの鼻の赤さも、そもそもダサいタイトルロゴもまとめて良い感じなんだけれど、フレッシュじゃない。一瞬の夢がフレッシュだったのはある意味映画史から自由で、職業俳優を使っていなかったからだ。薄氷の殺人はちょっと手練れ、色んな目配せがなされている。唯一おぉ!となったのは昼のダンスホールで、ラジカセのエレクトロ歌謡かけて、皆が社交ダンスレッスン中に1人で頭を振って踊るシーン。こみ上げてくるやるせなさが良い感じ。
寒い雰囲気が良い
IQ高い観念映画で通受け、私はNG
冷たく抑えたトーンで、中国の底流の心象を描く。サスペンスでもあり、恋愛でもあり、社会派でもあって、中国の現実を万華鏡を回すように、映し出す。
凝ったカット、ストーリー展開に、敢えて異質のもの、無関係なものを挿入し、観客の生理を乱す運びなど、実に計算された映像の連続。。。
素直に観る者を混乱させ、必死にサスペンスの筋を追う者を、ぐったり疲れさせる、難解でハードル高い映画だ。
映像が意味する暗喩が凄い。
映画の玄人がこの作品を高く評価するのは判るけれど、私はその理屈の連続に辟易して、全く楽しめなかった。
狂気を感じるラストシーンで、もう勘弁というくらい、打ちのめされて終了。
中国と香港の合作で、こんなハイレベルな映画が出てきたことに、驚いた。
粘度が高く息苦しさすら感じる空気感に浸る作品。
良かった。
作品全体に通底する静かで重暗く冷たい雰囲気。
粘度が高く息苦しさすら感じる空気感。
淡々と話が進む中……突如、登場人物達の感情が衝突/爆発して息を呑む。
そして再び静かな場面に戻り息を吐く。
息を吐き吸い込む空気はやはり重暗く息苦しさは続く。
作品の軸となる元刑事ジャンと未亡人ウーの関係性。
その関係性の読み取りこそが本作の面白さかと。
或る行動の真の動機を、後の別の場面での行動(結果)を通して初めて知る。
作中では分かり易い“切欠”は描かれないため、両者の動機を読もうと意識が集中しました。
両者共に器用な人間に見えない分、色々な可能性が残り展開に期待が持てました。
また話の作りを成立させた役者陣も良かった。
主役2名は共に良かったですが、特筆すべきは未亡人ウーを演じるグイ・ルンメイ。
自らの人生に対する疲れと諦観が滲み出た表情、佇い。
正体不明、だけど思わず肩入れしたくなる雰囲気が体現されており話に納得感を与えていました。
惜しむらくは提示される要素の配分バランスの悪さ。
心情を台詞で説明しない点は好感が持てますが。
心情を読み取るための要素のバランスが微妙に良くない。
玉石混合、石多めで若干混乱。
確かに真相の可能性を広げるための要素提示は必要だと思いますが。
その按配が微妙に合っていない気がして…その点は残念でした。
粘度が高く息苦しさすら感じる空気感に浸る本作。
鑑賞直後の消化不良感。
鑑賞後、時間経過と共に作品の雰囲気/空気感が肚に落ちていく感じ。
個人的には原題「白日烟火」の方がより適切な題名と感じる作品でした。
オススメです。
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