「堕ちていく男と女」ギリシャに消えた嘘 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
堕ちていく男と女
役者はみんないい仕事をしている。
でも、予告に騙された。もっと、一転二転三転ありのサスペンスかと思ったら、意外にストレート。
「消えた嘘」???ってあれのこと?
もっと別の、人間の内面をえぐってみせてくれるような、自分自身と向き合わされるような”嘘”ーギリシャ悲劇にも相当するーを期待しちゃったよ。
単に私が読み取れていないだけなのか。
邦題も思わせぶりだけれど、だからと言って原題ほどの深い意味は映画では描かれていない。
ライザックとチェスターの関係や二人の過去を思わすような内面のエピソードがあったら「ヤヌス」っぽくなったんだろうけれど…。
役者に頼りすぎたかな。
単なる逃走劇?
傍から見ているとわざわざ泥沼に足を踏み入れる決断ばかりで、ハラハラするし、見ていられなくって、もどかしいが、
当人たちは状況が見えてなくって、お互い頼りにするしかないのに、疑心暗鬼で、もがいている様子が迫真。
目先の利益に翻弄される主人公たちの浅はかさと相まっていい味出している。
『太陽がいっぱい』の原作者の別の小説の映画化とな。
『太陽がいっぱい』の主人公が犯罪を犯してしまう過程に共感ができるからこそラストが切なくて切なくてしかたがないのに対して、この作品の主人公たちが犯罪を犯す・関与する過程に共感ができない。それで、醒めてみてしまうのかな?
映画のキャラクターの魅力っていうより、役者の魅力で、先を見たくなる。
ギリシャが舞台。
観光名所ではなくとも、そこかしこが神々の寓話と日常生活が重なる世界。
とはいえ、
欧米文化には基礎教養かもしれないが、
日本人には(私には)、有名なモチーフこそアニメや漫画で繰り返し取り上げられているが、
ギリシャ悲劇も『イーリアス』も『オデュッセイア』もなじみが薄い。
なので、本歌取りのように、もう少し元ネタをにおわせてくれると味わえるのだが、描きすぎてもくどくなる。難しい。
原作未読。
脚本はいいのかもしれない。
役者は良い仕事をしている。
でもね、
見て損ではないが、これだけの名優を揃えて期待外れ。