「撮りたい内容を上手く脚本に落とし込めなかったであろう作品」プリデスティネーション cubonさんの映画レビュー(感想・評価)
撮りたい内容を上手く脚本に落とし込めなかったであろう作品
タイムマシンで過去に行って爆弾魔の犯行を阻止する、というのをメインストーリーに置いて、
・自分と別時代の自分の対決。
・物事の起点が分からないような作品。
がコンセプトの映画です。
まず登場人物が、大まかに言って全編通して、自分と時空警察の上司みたいな2人しかいません。
後は全部、別時代の自分です。
ですので、とてつもなく規模の小さい話です。
別時代の自分を自分だと視聴者に気付かれない様に、二つのミスリードがあり、一つは両性具有による性別変更で、もう一つは再建手術による顔の変更です。
過去に対して不要な改変すると死刑になるらしいのですが、冒頭から主人公(男)は意味無く過去に行きます。
そこで過去の自分(男)と話し、「爆弾魔の犯行を阻止する為」と唆して、そいつを連れて更に過去に行き、男になる前の、女だった過去の自分に過去の自分(男)を出会わせ、恋させて妊娠させます。
過去の自分(男)に捨てられたと思い、妊娠により仕事の展望を閉ざされた自分(女)は、難産で女性器を摘出され男になり、生んだ我が子は病院から何者かによって奪われ、しがない物書き=過去の自分(男)になります。
現在の自分(主人公)は爆弾魔の犯行を阻止できず、爆発で顔を失い、再建手術で別の顔になります。
過去に行き、自分が生まれ育った孤児院の前に、過去の自分(女)から奪った赤子の自分を捨て、未来で爆弾魔である自分を撃ち殺します。
タイムトラベルを繰り返した副作用で精神病になった主人公は爆弾魔になり、過去から来た自分に殺されます。
以上がこの映画のストーリーですが、過去の自分(男)の人生の回想録が映画の尺の大半で、大した抑揚も無い面白くも無い身の上話しが続くので、疲れます。
そもそも、主人公がタイムトラベルして過去に来ないと、自分自身が産まれないという矛盾があるのでストーリーが破綻しています。
爆弾魔の犯行を阻止するのが目的なら、そもそも主人公にタイムマシンを与え無ければ、それだけで主人公の存在が成立しなくなり、事足りる話です。
そういった脚本の不出来を「宿命」というキーワードで無理矢理成立させようとしていて厳しいです。
どうあがいても変更不可の物事の流れがあるなら、そもそもタイムマシンが意味無いですしね。
過去に行って、将来の爆弾魔を誕生させる改変をした主人公は、単に死刑で万事済む話です。