「絵が完璧」FOUJITA SHさんの映画レビュー(感想・評価)
絵が完璧
あくまでも個人的な好き嫌いでいうと、小栗康平の映画は面白くないと思っている。泥の河、死の棘、眠る男、いずれも単純に面白くない。それでも見てしまうのは、まわりの評価、世界的な評価からだけでしかないかなーと今更ながらに自覚しだしたのだが、今回のこの映画もその例外に漏れないだろう、きっと面白くないだろう、でも多分評価はされるかもしれないから見ておこう、という気持ちで、気合を込めて、臨んだ。
気合いが功をそうしたのか、いやいや監督の真の実力からであろう、非常に素晴らしい内容であった。涙とか、感動とか、笑いとか、そういったものとは無縁ではあるのだが、映し出される絵の全てが完璧であり、完璧に作りこんだ絵にしか見えないのに、その時代に身を任せているかのようなリアリティーを感じた。作品の中の意図とか趣旨、ストーリーなんてどうでもいい、ただ目の前の絵と音を鑑賞するだけで完結してしまうくらいの完璧さであった。
ただ、沖縄戦の映像を旧日本軍が上映していたシーンと、ラストのCG、その2ヵ所だけは納得しかねるものであった。そこがなければこれが今年の最高賞でもいいと思ったくらいだ。それくらい致命的なものだったと思う。
それにしても小栗康平にとって地球全てが巨大なセットのようなものになってしまったのだなー
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