劇場公開日 2016年5月14日

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「物語がTVドラマ向きだったのでは?」世界から猫が消えたなら ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0物語がTVドラマ向きだったのでは?

2016年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

余命わずかな主人公が、1日分の命と引き換えに周りにある大切な物を1つずつ消していく。電話、映画、時計…。物には思い出が宿る。あの日の彼女との電話、友達との映画談義、家族との時間。その物がなくなれば、当然その人たちとの繋がりも途切れてしまう。大切なもののない人生はどのようなものになるのか?自ずとこの物語の方向性は見えてくる。

しかし、この作品の主人公からは大切なものを失ってしまったという“喪失感”が感じ取れない。逆に大切なものを失くしてでも、生き長らえたいという生への執念も感じ取れない。継ぎ接ぎで挿入される過去のエピソードも物語のテンポを悪くしているし、生と死の価値観を観客に植えこもうとする唐突な展開も多い。語られるセリフも小説からそのまま引用したような印象で、普通こんな説明臭いこと言わないだろうと興ざめしてしまうのだ。

1つ1つのエピソードがラストに集約されるのであれば、怒涛のカタルシスを生み出すのだろうが、どうにもこうにも独立しすぎてしまっている。結果として、主人公が生きたいが故に物を消すことは単なる身勝手な行いにしか思えず、彼が大切なこと気付く結末にも今更感が否めない。

そもそも、この物語は映画ではなくTVドラマ向きだったのではないか?1話毎に1つの物を消し、大切な誰かとの思い出が消えていってしまう、けれども、生きたいという欲求から、また次のエピソードで何かを消してしまう…。103分という上映時間で描いた結果、全ての人との繋がりが浅いものにしか見えなかった。

Ao-aO