劇場公開日 2015年4月17日

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「迸る狂気を燃料に冥府魔道を爆走する師弟を描いた作品。」セッション Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5迸る狂気を燃料に冥府魔道を爆走する師弟を描いた作品。

2015年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

非常に良かった。

特筆すべきは終盤の圧倒的な密度。
ラスト9分19秒に詰め込まれた怒涛の展開、激しい情感と音/リズム。
ジャズに疎くとも密度の高いリズムに呑み込まれ、強制的に話に引き摺りこまれる。
気が付けばググッと前傾姿勢。意識は画面の奥底へ。
鑑賞後は極度の集中から解放された恍惚感と脱力感に包まれました。

圧倒的な終盤を成立させたのが主演二人の演技と巧妙な描写。
野心的な青年アンドリューを演じるマイルズ・テラー。
突き抜けた指導を繰り返す先生フレッチャーを演じるJ・K・シモンズ。
両者共に狂気を燃料に冥府魔道を爆走する姿を体現。

序盤は通常クラスの二番手で燻り生半可な気持ちでいたアンドリューが。
フレッチャーの特訓地獄を経験して野心と狂気を植え付けられる。
特訓を経る毎に目に、雰囲気に狂気が宿り観る側が畏怖する存在に変貌していく。
対するフレッチャーは最初から狂気の塊。
特訓場面の強烈さは本能的に危険を、自らとの明らかな違いを感じさせる。
徹頭徹尾その姿勢を貫き通す一種の潔さ。
フォルムから抱く印象も併せて強烈な父性、男性性が噴出している。
密度の高い交流が繰り返される中、両者が怪物化していくことに圧倒されました。

また人物像と演奏の評価を明確にしない絶妙な描写もグッときました。
ジャズに詳しい方は作中の演奏で登場人物達の技巧レベルを判断出来るのでしょうが。
ジャズに疎い自分としては正直良し悪しが全く分からない。
そのため演奏以外の描写で判断せざるを得ないのですが……客観的な評価が明示されない。
フレッチャーのクラスは名門音楽学校内でトップクラスと説明されるが。
随所で描かれる演奏の良し悪しと離れた無茶苦茶な追い込み。
その非合理と思われる指導場面が有るためアンドリューへの指導も音楽的に正しいか全く分からない。
常にフレッチャーに対する疑念があるため両者のセッションが全面的に意義あるモノと捉えられない。
意義の無いことに血道をあげている可能性も捨てきれず、その可能性が両者の狂気をより際立たせていました。

迸る狂気を燃料に冥府魔道を爆走する師弟を描いた本作。

話自体に現実感があるかは別として。
音が、リズムがもたらす強制的な高揚感に魅力と恐怖を感じる作品だと思います。
オススメです。

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Opportunity Cost