劇場公開日 2025年4月4日

「勢いとパワーで押し切られない様にしないと負けそうになる映画」セッション カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0勢いとパワーで押し切られない様にしないと負けそうになる映画

2025年4月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アメリカ版「嵐を呼ぶ男」(嘘です)
腕を怪我したら自分で歌えばいい・・・わけないw

数年前に配信で鑑賞したが、公開10周年を記念した4K&Dolby Atmosのデジタルリマスターでリバイバル公開という事で劇場にて再鑑賞した。

公開当時は自分も小中学生向けにとあるスポーツの現役コーチをしており、クラブ自体も厳しい事で知られていたこともあって、フレッチャーの指導方法に対し少なからず共感する部分もあったが、時代が変わり10年経った今改めて観るとただのイジメにしか見えなかったw。

名門音楽学院の指導者フレッチャーは自分でジャズの名演奏者を育てるという崇高な目的を掲げ軍隊の様な厳しい指導をするが、教え子達のメンタルをことごとく壊し、中には自死した者もおり、最後は行き過ぎた指導により学院を辞めさせられるが、その復讐として大衆の前でニーマンに恥をかかせようと(ここがなかったらホントに良かったのに)という反省どころかとんでもなくセコイ暴挙に出るなど、本来の目的はどこ吹く風状態で生徒への愛情なんていっさい無いイジメ体質のただのパワハラ指導者だということがわかる。

追い込まれていく生徒のニーマン自身も必死に食らいつこうとするが、交通事故など不運(とというより単なる自分のミスなんだけど)もあり大事な演奏に遅刻し、最後はフレッチャーへ掴み掛かり退学になる。

ニーマンが最後はあくまでもミュージシャンとして、そしてジャズドラマーとしての戦い方で応戦するが、フレッチャーも戸惑いながらも中断させなかったのは本来自身もジャズを心から愛する者としてずっとこのままでいたい、ずっと演奏させたいという気持ちが勝ったからだと思う。

色々とツッコミどころは多いが、とにかく演奏シーンは圧巻で見応えが半端なく、実際ジャズドラマーを目指していたというデイミアン・チェゼル自身の経験からならではの臨場感を演出し、特にラストのニーマンの血と汗が飛び散るドラミングは観ていて鳥肌が収まらないほど強烈で、画面に呑まれないよう必死になってしまうほどだった。

まさに音響設備の良い劇場で観るべき映画である。

カツベン二郎
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