劇場公開日 2015年4月17日

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「最高のフラストレーションムービー」セッション オレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5最高のフラストレーションムービー

2015年11月29日
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鑑賞方法:映画館

興奮

世界最高の音楽院にて偉大なジャズドラマーに憧れる少年アンドリューニーマンと彼を異常な熱量と指導法で教える指揮者テレンスフレッチャーの2人のエゴとエゴのぶつかり合いを描いた最高のフラストレーション音楽ムービー。

こういう類の映画って仲間がいたから頑張れた的なとこ絶対あるじゃないですか、ましてやこの作品なんてジャズがテーマなわけで心を一つにしてー最高の音楽をーみたいな展開かなと思うじゃないですか。
そんなの一切ないんすよこれ笑。
しかもこの映画に出てくる人間で好きになれる人1人もいない。全員エゴクズ笑。

主人公のニーマンは学内では平凡なジャズドラマーだったがある日学内最高の指揮者として知られるフレッチャーにスカウトされ、彼のスタジオバンドへ招かれることに。
こんときのマイルズテラーが音楽的センスはあるけどファッションとか恋とかに疎い青年を絶妙な感じで表現してて観ててめっちゃムカつく笑(褒め言葉)
フレッチャーの目に止まったことを嬉しく思うものの、そんなに親しい友達がいないのか1人で俯いてニヤつく感じとかすっごいウザい笑(褒め言葉)
自分の唯一絶対な自身の源であるドラムに対してのプライドを高く持ちすぎて、ニーマンのドラムよりもアメフトや勉強のできる同世代の親戚を評価する親族に露骨な蔑みの態度を取ったり、学友のドラムプレイヤー達に敵対心剥き出しで自分の実力を見せつけようとしたりとフレッチャーに対する対抗心により、ドラムに対する異常な執念を持つ少年へと変化して行く様を時に虚ろな表情、時に憎悪に狂った表情で演じる。

イスを投げるシンバルを投げる、かのフルメタルジャケットのハートマン軍曹に並ぶ親すら侮辱する怒声の言葉責め、5時間を超える罵声のレッスンなどのぶっ飛んだ指導法で生徒を精神的に肉体的に追い詰めて行くもう1人の主人公フレッチャー演じるJKシモンズの迫力はものすごい。
1割の飴と9割のフルスイングの鞭でニーマンを一喜一憂させるある意味指導者の鑑(鬼の)
最初からニーマンの才能に目をつけ、彼を焚きつけるためにあえて初回の練習で体罰を伴う罵倒をしたのか、あえて新しいドラマーをバンドに招致したのか。それともただ単に性格の悪い気まぐれな完璧主義者なのか笑、どちらの推察もできる演技力と圧倒的な存在感で作品に信じられないほどの緊張感をもたらしている。

ほぼこの2人のエゴの張り合いな作品笑。
正直開始から1時間半くらいはイライラの連続、後半では交通事故でドラムどころではない始末。
なら何がそれほどまでに素晴らしいのか。
それは紛れもなく宣伝通りラスト9分19秒である。
このラストのためだけにそれまでの1時間半が存在しているといっても過言ではない。いわば完全にそれまでの時間は下準備なのである。
というわけで最後にこの9分19秒を語りたいと思う笑。

まずラスト手前のフレッチャーの行為はいうまでもなく最低な行為だ。ここはたとえニーマンを煽るためだとはいえやってはいけない行為だ。
だがここが最後のイライラ要素だ。
ここから1時間半に渡るブラストレーションが全て無になる9分間が始まる笑。

先のフレッチャーの行為で1度舞台から逃げ出したニーマン。しかし意地で舞台へ戻り、フレッチャーの進行予定とは全く別の曲、Caravanを演奏し始める。
まずここの出だしが最高。次の曲がスローな音楽だと紹介した瞬間にその言葉を遮るようなハッとする出だし。
こんときに3回に分けてニーマンがアップにされる演出とニーマン自身が指揮者の役割も果たすことでフレッチャーに干渉されることない自分のバンドを一瞬にして作り上げた点が素晴らしい。それに続くウッドベースのジャジーな低音もたまらない。ある意味ここの音が1番好きかもしれない笑。

そのベースの後にトランペットら管楽器が続き、全ての楽器が噛み合った最高の音楽が奏でられる。正直このトランペットらの息の合いようが御都合主義な感じもするが、この際どうでもいい笑。ここに来て初めてこの映画素晴らしいんじゃないかと鳥肌が立ち始める笑。

その後の曲の構成も素晴らしい。
徹底したリズム隊としての心地よいドラムに管楽器らの伸びやかな響きが最高のマッチング。思わず立ち上がってしまうほどのトランペットソロの見せ場もあれば、殺してやると息巻いていた指揮者フレッチャーの見せ場すらある。ドラムに合わせて腕を振るだけの酔っ払いのおじさんにも見えるがこの時のフレッチャーの拍の取り方が最高にキマっている。こういう風にテンポ良く動けると最高に気持ちいいはずだ。

さらに前半のジャズバンドのアンサンブルの一体感を十二分に見せつけた後に、ラスト5分ほどのドラムソロがやってくる。
ここの展開も最高!リズム楽器のはずのドラムのみだけでここまでいろんな音を出せるなんて!雷のようなゴロゴロとした音を鳴らすハイスピードなスネアの音にたまに混じるシンバルのチッチッチッという音がクセになる!笑
ラストに向けて段々と静かになっていくシンバルの繊細な音に合わせて霞んでいく風景。。そこから段々と盛り上がって行き、身体中をフルに使ってありとあらゆる音を出し、もはや音の幕を1枚張ったような迫力を感じさせる展開から一転、再びローテンポになっていくドラムロール。。。
この瞬間もはや過去のことは忘れてただ純粋なジャズドラマーとその指揮者と化すニーマンとフレッチャー。
お互いフィナーレを理解してるかのようにアイコンタクトをし、フレッチャーの指揮に素直に従うニーマン。
ギリギリまでスローテンポにしたドラムロールから再び加速していくスネアのリズム。。
再び音の幕を張ったかのような轟音で観るもの全てを圧倒するニーマンの最後のドラムプレイに合わせ、溜めて溜めて溜めて。。
待ってましたといわんばかりの管楽器の快音!!!!!からのエンドロール!!!!
素晴らしい!!!!!音楽映画史上最高のラストシーン!!!笑

ということで傑作です笑。
まさか演奏シーンを語りたくなる映画が出てくるとは思わなかった笑。全てを無かったことにし、鑑賞後最高の高揚感を得ることができるまさに珠玉の一本。
こんだけ偉そうに語ったけど自分楽器未経験者です笑。リコーダーとピアノでゴジラかハリポタの一部しか弾けないです笑。
なのでスネアがどうとか間違ってる箇所もあるかもしれないので何かあればご指摘いただけると幸いです笑。

とりあえず音楽好きの日本国民はこの映画がリバイバルで映画館でやってれば観に行くべきだし、あのラストが終わった瞬間に観客さながらスタンディングオベーションで拍手をしまくるべきだ。そういう法律を作るべきだ笑。そんな作品。

2015年11月28日(土)1回目@早稲田松竹
2017年04月07日(金)2回目@ユジク阿佐ヶ谷

オレ