「「Fast & Furious」と「007」のど真ん中に立ってしまったが、さて。」ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
「Fast & Furious」と「007」のど真ん中に立ってしまったが、さて。
「Mission: Impossible - Rogue Nation」
今作において、「Rogue Nation」とは、敵組織「シンジケート」のことだけでなく、アメリカ、イギリス諜報機関、それらに対しての意味でもあることが、本作のテーマであることは、ヒロインの境遇や、レナーとボールドウィンの立ち回りからも想像できる、なかなかいいタイトル。前作の「Ghost Protocol」などより、はるかにいい。冒頭のミッションのひっかけなど、その混沌とした世界がこれから繰り広げられるという展開もいい。(ただし今回のミッションの伝達ツールはつまらないし、さすがにありえなさすぎだけどね。)
「スパイ大作戦」をしょっぱなから全面否定の、オレプロデュースの映画宣言の「1」、究極のトム・クルーズ映画の到達点およびアクションのできる映画スター宣言の「2」、年をとり、本人自身はだいぶ迷いがあったころであろう「3」、開き直りが開花し、唯一無比のスターの立場を確立した「4」。
シリーズ共通していえるのは、「緊張感のないスパイ映画」ということだが、それはいままで、トム・クルーズの魅力を全面に出すための、ある意味「真逆ゆえ、当たり前」。
その意味で「4」はスター性、アクション、ストーリー、すべての要素が振り切れておらず、個人的には、「それならMIシリーズでなくても」、「ニヤけてないし、トム・クルーズの映画でなくても」いいんじゃね?と思った。特に「4」は、全体を通しての「時間」の緊迫感がないのは、いかんともしがたい欠点だった。
さて本作。
正直言うと、相変わらずの「ストーリー」の吸引力は薄い。しかし「時間」については、今回すべての見せ場でそれがキーになっていることがわかる。冒頭のシーン、オペラ、潜水、チェイス、ラスト。
ただし、今回はストーリー自体の「吸引力」は「女スパイ」の正体、その駆け引きでぐっと引っ張っており、この点がこのシリーズのもっとも駄目だった「全体を通しての時間の緊迫感」は損なわれなかったように思う。
このあたりは、前作「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のヒロインとの距離感、トムの立ち位置などが、その脚本家でもあったマッカリーとトムのなかで活かされていると思う。
MIシリーズにおいては本作が一番よくできている。(個人的にはトムのキャリア、およびハリウッド映画史では間違いなく「2」が最強、と信じてますけどね)
ただし。
ストーリーは今までで、もっとも「007」よりで、やっていることは、「Fast & Furious」シリーズに近くなってきていることが気になる。
いやもちろん、「Fast & Furious」シリーズのほうが、やっていることはすでにおかしいのだが、「個性派グループが世界を股にかけ・・・」、というのは、まことに、まことにおかしいことなのだが、今では「Fast & Furious」シリーズなのだ。
立ち位置としては、「007」と「Fast & Furious」に挟まれた形となり、非常に難しい、いや、なかなか興味深いところに来た、ということにしておこうか。
追記
ここぞ、という時のCG感ががっかり。
冒頭のドアオープン後の処理、カーチェイスのラストの処理。いずれも、前者はトムのすっとぼけ感、後者はバイクチェイスにつながるので、まあ、いいか。
バイクチェイス
待ってましたの、バイク。車間をすり抜ける画がと、地を這う、前方ぎりぎりのカメラワークが素晴らしい。トムのスタント(ノースタントなわけないじゃん)処理、CG処理も素晴らしい。
潜水
差し込むカートリッジがどっち?というサスペンスを作っておいて、さらっと流されたのは、何かの冗談かと思ったが、溺れるトムの画が最高だったので、まあいいか。
ラストのボス決着
これこそ何かの冗談。このラストだけは大減点。