「唯一無二の名作。」忘れないと誓ったぼくがいた 漣音さんの映画レビュー(感想・評価)
唯一無二の名作。
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記憶をテーマにした非現実的なストーリなのだが、
強烈な印象に残る作品だった。
誰にでもある「忘れてしまう」こと。
大切な人の名前を忘れてしまう自分に重ね合わせ、
どのクラスにでもいる「影の薄い子」に対するイジメめいた
出来事に重ね合わせ、どんどん作品の中に取り込まれていった。
作品の中に描かれていない以前の出来事をどんどん妄想してしまう。
そして何度観ても泣ける。
2時間程度の作品をまるで自分の人生に起きた出来事の様に
感じさせるのは作品の中に描かれていない部分をどれだけ数多く
連想させるかが決め手だ。
名作を作り上げるの最後の決め手は受取手の妄想だと思う。
タイムパラドックスによる記憶の修正。老化と痴呆。
記憶に残らない存在の薄いクラスメート。シカト・いじめ。
しかしこれらの妄想は私が個人的に空想した訳ではない。
クラスメートからの「あなた誰なのきもいんだけど」の糾弾。
ヒロインがボランティア活動している老人ホーム。
レンタルショップの会話で出てくる「タイムスリップ物」。
たった一枚の写真や「禁煙辞めちゃったんですね」の発言で
かなり前に既に家族に紹介していることを暗示させるなど、
作品の中に直接そのシーンを描かず関連するワードを織り込むことで
より多くの背景を連想させる作りになっている。
一般的青春恋愛ファンタジーとは一線を画す名作だ。
後半に行くにつれて全体像が見えてきて最後には熱烈恋愛映画だった
ことに気付かされる。
忘れる。想いが離れてしまう。逢っていても苦しい。
想いが届かない苦しみ。付き合い続けることが相手を苦しめる。
恋愛の様々な要素をたった一つのテーマの中に込めて、
恋愛の苦悩全てを表現しているように思える。
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