劇場公開日 2015年6月6日

「ちぐはぐなキャラクター造形、演出」予告犯 テオさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5ちぐはぐなキャラクター造形、演出

2015年6月13日
iPhoneアプリから投稿

映画オリジナルのシーンも含め、原作が持つ悪い部分のみが殊更強調され、序盤から興醒めしてしまった。

作品のフックとなるネット配信を使った予告は、匿名のネットユーザーという、無責任な傍観者からの圧力を生み出す、とても現代的な仕掛けだ。

こういったある種のライブ性を持った題材を扱うに当たっては、美術やセリフの端々など、現代風俗に対するディテールにこだわりが増すことでリアリティーを獲得して行く。
予告シーン絡みの演出は必ずしも成功しているとは言い難いが、実際にニコ生等で発生した事件を視聴していたであろうユーザーのリアクションとしては近しいものがあり、演出もある程度のフレッシュさがあった。
(実際はもっと汚い言葉が画面を埋め尽くすと思うが)

しかし、マンガ的なキャラクター造形で、作中一番ファンタジーな役柄である刑事を戸田恵里香がそのまま演じる事により、作中のリアリティーラインを著しく下げてしまっている。
一本調子の説明台詞、刑事らしからぬ体格(しんぶんしを一人で追い詰めてどうするつもりだったのだろうか…そもそも何故あれだけ動員していながら応援を呼ばないのか…そして捕まえられないと分かるやヒステリックな負け惜しみ…)何より一番酷いのは、昭和の中年男性が夢想したような「バリキャリウーマン風」の風貌である。
作中の言葉を借りれば「なぁ、今って21世紀だよなぁ?」となる。

以降、しんぶんし側4人がどんなに素晴らしい芝居をしても、戸田恵里香が登場するシーンを挟む度、作品に対する興味と共にテーマの重みもひたすら下がって行く。

その他、意外とのほほんとしたタコ部屋、「安っぽい」という感想を出させる事以外に機能していない劇中CM、音声出力機能付きTwitterなど脱力する演出が続くが、しんぶんし側4(5)人の演技アンサンブルは、キャラクターがしっかり立っていることもあり、非常に見応えがあった。
(一人一人に無駄に長いカットで渾名を付けていく、という拷問に近い演出も、その後の自然なアドリブ台詞で成立させていた)

しんぶんし自体はとても魅力のあるキャラクターだし、現代日本でしか成立しない登場人物とテーマであっただけに、映画でこのような消費のされ方をしてしまったのは残念でならない。

テオ