「芸術とは爆発だ。」ザ・ウォーク うるぐすさんの映画レビュー(感想・評価)
芸術とは爆発だ。
この有名な言葉は岡本太郎のものだが、この映画を観てこの言葉の意味がほんの少し理解できたと思う。
あらすじはわざわざ書きません。究極にまとめると、「主人公が“世界一高いビルであった”ワールドトレードセンターの二棟にワイヤーを引っ掛けて綱渡りを実行する。」って感じでしょうか。
ただし、これだけで判断して「観なくてもいいや」というのは違います。ダメです。これは観るべき映画の一つです。そして、映画館で、3Dで観るべき映画なのです。
綱渡りから想像するのは、サーカスであり大道芸。だけど、主人公は自らをアーティストだとする。つまり、芸術家。この主人公を芸術家たらしめる一番の要因は「爆発的な衝動」。これに尽きる。何の為にそんな高いところで綱渡りをするか?ーそれが彼の夢だから。 もうしょうがないんですよ。「やりたい」が理由になってしまうともうそれ以上は止めることもできない。だから、彼の恋人や仲間は共犯者にならざるを得ない。そして、彼が綱渡りを実行し、それを見る我々ー映画の観客ーさえもが共犯者となってしまう。映画館が緊張感に包まれて一体感が生まれる。みんな3D眼鏡をかけて自分の世界に入っているはずが隣の他者の体温を感じてしまう。この不可思議な体験。これこそ映画鑑賞じゃないのか。
そして、それだけにとどまらず一番最後に「forever」というフレーズを聴くことで「あの大事件」についてちゃんと向き合うことで、単なる実話を映像化したものを現代にまでリンクさせる。
これは、素晴らしいというシンプルな評価がふさわしい。