劇場公開日 2016年1月23日

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ザ・ウォーク : 映画評論・批評

2016年1月19日更新

2016年1月23日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

全身でリアルに体感させられる「綱渡りバカ」の破天荒な冒険譚

バカの映画だ。バカと言っても頭が悪いという意味ではないし、バカにする気などは毛頭ない。野球バカとか映画バカとか、アホかと言うほどそのことに打ち込む人のことだ。この映画の主人公は、言うなれば「ワイヤー・ウォーク(綱渡り)バカ」。もっと言えば「高所バカ」とか「ヤバさ(スリル)バカ」でもある。実在するフランス人のワイヤー・ウォーカー、フィリップ・プティ、当時25歳だ。ニューヨークにそびえる高さ411メートルのツインタワー(ワールド・トレード・センタービル)の間にワイヤーをかけて渡ってやろうと考えて、実行してのけた。もちろん命綱なし、ビルの関係者には一切無断で。これほど無謀で奇天烈なことを考える人間に、バカ以外の賛辞が送れるだろうか?

しかも、それを映画で完全再現しようという「映画バカ」が、3Dで映画にまたもや革命を起こし、持てる力のすべてを使って映画にした。SFでもファンタジーでもないのに。これが、ロバート・ゼメキス。おまけに生粋のアメリカ人なのにフランス訛りを駆使し、猛特訓をして短期間で実際に綱渡りを習得、フィリップになりきったのが「役者バカ」のジョセフ・ゴードン=レビット。映画はプティがサーカス団と出会った幼き日から、“祭”の後の姿までを映し出す。これで破天荒な映画ができないわけがない。

プティの冒険は映像として残っていないが、ドキュメンタリー「マン・オン・ワイヤー」ですでに映画化されている。その映画でも十分ビックリさせられたわけだが、「こうだった」と言葉や写真で説明されていたことが、すべて3Dで目の前に表出される。「へえー」というレベルだった驚きが、本作では「なんてことをっ!」というレベルで大興奮を呼ぶ。なにしろ全身で、彼がやろうとしてやり遂げたことをリアルに体感させられるのだ。高さを、ワイヤーの揺れを、ヤバさを、有無を言わさず。自由の女神から自分の冒険を回想するプティがいまそこにいるのだから命を落としていないことはわかっているのに、手に汗ハンパない!

計画実行までのスパイ大作戦的な連係プレーも、それはもう想像を絶するチャレンジで愉快だし、プティの狂熱を支えた愛や友情もカラフル。青春映画としての魅力にもあふれている。そして幕引きとともに残るのは、一握りのノスタルジー。何ごとも、あのころのままではないことを、二つの塔が象徴している。

若林ゆり

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