「ワールドトレードセンターへの壮大なオマージュ」ザ・ウォーク masala0517さんの映画レビュー(感想・評価)
ワールドトレードセンターへの壮大なオマージュ
本作は大道芸人フィリィップ・プティの狂った偉業を称えつつ、その物語の背景となった、今は無きワールドトレードセンターへの壮大なオマージュを捧げた作品となる。本作を見ると改めて米国民はワールドトレードセンターロスになっている事を再認識した。
作品は実話を基にした物であるが、監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキスだけに、ただのトゥルーストーリーだけで終わらせなく、1本の作品として十分楽しめる。
以下ネタバレ注意
まず、本作は実話であるが予備知識無しで見た方が面白い。作品は自由の女神のたいまつの上でプティが語り部の如く、自身の歩んだ道のりを語り出して物語が展開する構成だ。私はプティの事を知らずに見た為に、ありえ無い場所からプティが物語を語り出したので、故人となったプティが生前を振り返っているかと思いながら見ていた。
物語はプティの大道芸人としての生い立ち、恋人アニー、親友や師匠となるルディ(ベン・キングズレー)との出会いを時系列に描き、本題となるワールドトレードセンタービル2棟間をゲリラ綱渡りの計画、共犯者集め、下見までがテンポ良く描かれる。
そして本題となるワールドトレードセンタービルの綱渡りが実行される。今は無くなってしまったビルが画面上に写っている事だけでもすごいのに、その地上411メートルの高所を命綱無しで綱渡りを実行するプティの狂気に、精密なCGと3D映像が合わさり目がくらむ。
IMAXをはじめ映画館の大スクリーンに3D映像を想定して作られた映像は驚愕レベルだ。この辺はVFXや3DCGアニメ作品を多く手がけてきたゼメキスならではの映像アプローチであろう。
本作は先にも書いた通りにプティを狂言回しに使いながら、裏の主役はワールドトレードセンターである。01年に発生したアメリカ同時多発テロの標的とされて、その姿を消してしまう。
ラストにプティはワールドトレードセンターへの永久フリーパスを手に入れるが、そのパスをもう使う事は出来ない。そんな本作はプティの偉業を通して、いつまでも米国民の心の中で輝き続ける、ワールドトレードセンターへの最大のオマージュとなる事であろう。