「007番外編と侮るなかれ」スパイ・レジェンド ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
007番外編と侮るなかれ
5代目ジェームズ・ボンドことピアース・ブロスナンが13年ぶりにスパイ役を演じることが話題となった本作。その上、ヒロインがオルガ・キュリレンコと聞けば、ついつい007番外編では?と思ってしまう。しかし、蓋を開けてみればユーモアなし、お色気なし、ガジェットなしの硬派な仕上がり。主人公ピーターもボンドとはひと味違ったキャラクターになっているのも好感が持てる。
次々とスパイ仲間が殺されている情報を知り、引退していた元凄腕スパイが捜査に乗り出すというのがあらすじ。かつて自分が育てた部下との攻防を交えながら事件の真相を追っていく中で、携帯端末を使っての情報戦や身近にあるものを武器にしてしまうスマートさはスパイ映画の醍醐味を味わわせてくれる。スパイ映画というジャンルにおける及第点もクリアしており、特に冷戦時代のスパイものが好きという人は見逃す手はない一作である。
しかし、少々不満もある。主人公が引退した元スパイという設定ならば、現役を退いてからのブランクや年齢を感じさせる演出があるべきだったのではないだろうか?かつての部下で荒削りな現役の若手スパイとの攻防も(頭脳面はともかく、力技の面では)もっと若手が有利になっても良かったのではないだろうか?とりわけこの師弟対決がアクション面をリードする故に、冒頭の事件を描くシーンではこの2人の師弟愛を掘り下げておく必要があった気がしてならない。
ストーリー次第では続編も十分有り得る本作。シリーズ物とするならばボンドともボーンとも違うピーターの個性を突出させてくれることを期待する。
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