劇場公開日 2015年1月24日

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「アメリカショービジネスの奥深さ」ANNIE アニー ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0アメリカショービジネスの奥深さ

2015年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

大成功を収めたブロードウェイミュージカルの映画化ということで、まあ、映画としては当たって「アタリマエ」という作品なんであります。
逆に言えば、映画作品として大ヒットしなければ、それは映画としてどこかに欠落があるのだろう、と推察できる訳です。
結論から言えば、僕の感想として本作は「まずまず」といったところ。
気になったのは、監督の演出の荒さが際立ってしまった、というところでしょうか。特に、僕が見ていて気になったのは「編集」でした。
これミュージカルのはずなんだけど、まるでハリウッドのアクション映画でもやってるかのような編集なんですね。
「0,5秒以下」のカット割りの連続。
大スクリーンがパッパッパッと切り替わる。せせこましいなぁ〜。
はっきり言って観ている観客は疲れるんですね。
ここは登場人物たちの「絡み」をじっくり見せるシーンだ、と思ってこっちは観ているのに、なぜかそこでもカット割りが実にせわしない。落ち着いて観ていられない。舞台でのミュージカルは、映画で言えばワンシーンワンカットの長回しを延々やっている芸術であるはずなんだけど。
舞台と映画の最も大きな違いは、時間と場所なのです。映画の場合、まったく自由に設定できる。屋外でロケをやってもいいし、過去や未来へ行ったり来たりも、編集で自由自在。おまけにキャメラワークで観客の視点すら自由に変えることができる。
本作の監督は、このような、舞台では決して出来ないことをやりたい!!と思ったのでしょう。本作の後半では、アニーがヘリコプターに乗り込んで、悪い奴の車を追いかける、なんてシーンも有ります。
まあ、舞台ではこんなことできませんわなぁ〜。
うだうだと御託を述べましたが、決して本作は駄作ではないです。
脚本がしっかりしてる。人物造形もいい。キャスティングもとってもいい。映画として成功する要素は全部備わっているんです。
だから編集が余計に「惜しい〜!!」と唸ってしまうわけなんですね。
主人公アニーは両親に捨てられ、民間の養護施設に入っています。
この施設の主が過去の栄光を忘れられない、女優志望のおばさん(失礼)酔っ払って、施設の子供達に遠慮なく当たり散らすし、そのくせ里親希望の「いい男」「金持ち」「独身」が訪問してくれば、もう、なりふりかまわずアピールしまくる。下世話を絵に描いたような女性なんですね。このハニガンという女、なんとキャメロン・ディアスが演じてます。いいですよ、彼女の演技。
ある日、アニーは危うく交通事故に巻き込まれそうになります。そこを助けてくれたのが、ある黒人男性。
その人物こそ、市長候補スタックス(ジェイミー・フォックス)でした。
たまたまその現場に居合わせた市民が、少女を助けた勇敢な男の動画をネットにアップ。
世間ではちょうど市長選挙の真っ最中。
ここで、スタックスの選挙参謀が入れ知恵をするのです。
「アニーはいい宣伝材料ですよ、スタックスさん、この子を前面に押し出せば、好感度アップ間違いなしです!!」
やがて、市長候補スタックスは、アニーを一時的に引き取り、選挙戦に「活用」するのです。スタックスのマンションに引き取られたアニーとしては、まさにシンデレラストーリー。
今までは一部屋で5、6人のタコ部屋暮らしから、一転、高層ビルの最上階に住む身に成り上がります。ここはスタックスが一人で住んでいる、未来的超豪華マンション。部屋の中には噴水まである。壁に話しかければ大画面のスクリーン映像が現れる。ハイテク装備満載。
こんな部屋に住めるのは、スタックスが携帯電話会社の経営者だから。
スタックスにしても、アニーを使った選挙戦は大好評。スタックスの支持率とともに、アニーの人気も急上昇します。
テレビやマスコミに取り上げられて、彼女は街じゅうの人気者になって行きます。
しかし……人気者になったアニーに、一つの知らせが入ります。
アニーを捨てた両親が、名乗り出てきたのです。やがてアニーは両親の元へ帰されることになるのですが、そこにはある陰謀が……。
という訳で。アニー役のクワベンジャネ・ウォレス。若干11歳とは思えない安定した演技力はすごいです。それもそのはず。彼女は「ハッシュパピー バスタブ島の少女」で史上最年少のアカデミー主演女優賞候補にもなっていたんですね。納得の演技でした。
共演のジェイミー・フォックス。以前、劇場鑑賞した「Ray レイ」は忘れられない作品です。キャメロン・ディアスにしても、今回は業突く張りで虚栄心丸出しの、えげつない「オバハン」役をこなしていて、そろそろこういう役を演じる、演技の幅を広げてゆく時期に来ているのだなぁ〜と感じます。
 主役のアニー役のクワベンジャネ・ウォレス。彼女もきっと凄まじく過酷なオーディションを受け続け、勝ち抜いてきたんでしょうな。
更には、一つの映画で成功を掴んで満足してはダメで、アメリカのショービジネスで成功し続けるには、常に挑戦をし、高みに挑み続けなければならない。本作での、あまりにも完成され、豊かな才能を持った人たちが、スクリーンで演じているところを見ていると、そんな、厳しいアメリカでのショービジネスの裏側に、おもわず想いが膨らんでしまうのでした。

ユキト@アマミヤ