「【2014年版『アニー』を観て】」ANNIE アニー よねさんの映画レビュー(感想・評価)
【2014年版『アニー』を観て】
そもそも『アニー』は1982年の映画化以前にブロードウェイミュージカルの鉄板コンテンツであり、その再映画化というのは『宇宙戦艦ヤマト』の実写化や『ドラえもん』の3Dアニメ化とはケタ違いの批判を食らうのは目に見えているはず。それを承知であえてやる、そんなこと考える奴は単なる守銭奴なわけですが、プロデューサーがウィル・スミス&ジャダ・ピンケット・スミスというバカ夫婦、当初は実娘を主役にしようとしていた(モタモタしてるうちに中学生になってしまいあえなくボツに・・・)わけで、もうその動機だけでクソ確定じゃないですか?いや作るのは勝手だけど客からゼニ取る気かよ?って話。しかも舞台を現代に・・・もうどこ嗅いでもゼニの臭いしかせんわ!
そもそもウィル・スミスにはプロデュースセンスがさっぱりなくて絶妙にダサいので、去年は『アフター・アース』という息子を主役にしたSF映画でグローバルに失笑されたばっかりなんですが、なんだ、この厚顔無恥ぶりは?
一方の私は1982年製作のジョン・ヒューストン監督版『アニー』の大ファンであり、当然のことながらサントラはLPが擦り切れるまで繰り返し聴き込んでいるので全曲今でもソラで歌えるので当然批評が辛口になるのはしょうがないわけですが、それでも腐っても一応は『アニー』、ひょっとしたら何秒かは面白いシーンもあるかも知れないと軽い期待を持って観に行ってみたわけです。ということで以下記憶している限りのツッコミどころを列挙しましたので、これから『アニー』を鑑賞しようという人は絶対読んだらダメです。
・冒頭シーン、小学校の授業。いかにもアニー、アニーした赤毛の少女のスピーチ。あれ?っと思わせるツカミのつもりなんでしょうが、もう予告で散々主役の子は十分に顔バレしているので壮絶にスベっています。
・で、「はい、ありがとう、アニーA。じゃあ次はアニーBね」という担任の先生によるクソ寒いMCの後でアニー登場。フランクリン・D・ルーズベルト大統領について熱いスピーチを披露するアニー。まあ、これは元の『アニー』は世界恐慌渦中の話だったからという目配せなんですが、「今度のアニーは歴女です」ってどこのどいつが喜ぶ設定やねん、それ!?
・で、下校時にダッシュで帰宅するアニー。道すがらレンタル自転車を返却しようとしている女性に「返却まであと何分残ってる!?」と声をかける。10分よと聞くやいなや「じゃあ、ちゃんと返しとくから!」と自転車に跨るアニー。「えーと、このシーンに何の意味があるのかしらん???」と首をかしげてたら自転車にプリントされてるシティバンクのロゴがバーン!と大写しに。もう早速ゼニ勘定始まっとるやないか!?
・で、アニーが寄り道(ここはちょっとしたイイ話的な設定があるんですが、クソしょーもないので省略)した後帰宅したのは孤児院じゃなくて、身寄りのない数人の子供を養う里親宅。ここでハンニガンさんことキャメロン・ディアス(以下キャメ)登場。まあ確かに現代を舞台にして孤児院という設定はアナクロ過ぎるとは思いますが、市から支給される週157ドルの給付金目当てで里親をやってるという設定・・・いやいや、それ丸々懐入るわけやなくてまずは子供食わせなあかんから割合わんやろ!?だったらどこぞでバイトした方が効率ええんちゃうんか!?
・で、キャメ、ただのオバさんやなくて、C+Cミュージック・ファクトリーの元メンバーでメジャーデビュー前にクビになった人という設定。その微妙にダサいアーティストチョイスの何が面白いのかさっぱり解らんわけですが、だったらせめて♪Everybody Dance Now!とまあ誰でも脳裏の隅に残ってるサビくらいチロっと歌わすとか入れてもバチは当たらないはず。
・だいたいこの映画そもそもモノローグ的な独り言とかでやたら登場人物の過去とか心情とかを説明するのよね。それ、ダメ映画のテンプレやから!というかミュージカルやねんからそこは歌なりダンスなりで表現してナンボでしょに!
・自身のイメージアップからアニーを自宅に招く大富豪、オリジナルだとウォーバックス氏ですが、本作ではなぜかスタックス氏に名前変更。で、スタックス氏はケータイ会社の社長さんでその知名度で時期ニューヨーク市長選に打って出ようとしている野心家という設定。しかしだね、そもそもウォーバックス氏はオリジナルの挿入歌I Don’t Need Anything but Youの歌詞中に”私はミダス王よりもリッチだ”とあるように超ド級の大富豪で、無数の召使を従えてドエライ豪邸に住み、時のルーズベルト大統領を自宅に呼びつけるくらい簡単に出来る絶大な権力を持っている人なわけで、そんな何でも思いのままの人であっても愛すること、愛されることだけはとんと不器用というのが『アニー』のキモ。このスタックス氏はペントハウスに住む独身貴族で、まあ住まいこそハイテク装備でリビングも庶民感覚からしたらバカ広いわけですが、それでもウォーバックス邸の玄関の方が広いから!だいたいスタックス氏、「みんなSNS使ってるご時世にケータイでツナガるなんてねー」とそこらのおばちゃんに陰口叩かれる程度の人なので、すなわち各種選挙戦に出没する泡沫候補レベルのリッチさなわけで、なんかもう壮絶にショボいわ!
・オリジナルではウォーバックス氏の秘書グレースが孤児院を訪れて明朗快活なアニーを見初めるわけですが、こちらではたまたま街中でトラックにはねられそうになったアニーをスタックス氏が偶然助けたところを目撃した通行人がYouTubeに動画をアップしたとたんに支持率アップ、あ、これいいね!とばかりにアニーを利用して支持率上げていこうと行き当たりばったりのイメージアップキャンペーンを展開していくのでものすごく後味悪いです。
・このYouTubeにアップされた動画、通りすがりの人がたまたま撮っただけのはずなのに、手ブレもない美麗なプロ仕様の画質の上にカットの切り返しがある・・・というかつい数十秒前のシーンまんまやないか!?いやそこはメンドくさいかも知れんけど、スマホで撮った風の動画を別撮りしましょうよ!
・ウォーバックス氏はスキンヘッドのいかついオッサンなんですが、スタックス氏は五分刈り設定。なんでスキンヘッドにしないのかな?と不思議に思ってたら、この五分刈りが実はヅラであることをアニーに目撃される!え”ーっ、ウソやろ!?で、それの何が面白いの!?それはさすがに作ってる側も気づいたのか、その後一切触れられなくなりました・・・だったらその設定まるごと削除したらええやないか?
・スタックス氏の選挙参謀のおっさんとキャメは共謀してアニーの実の両親をデッチ上げて感動の再会を演出し支持率アップを画策。キャメは両親役を公募して自宅でオーディションするというあり得ないボケをかます・・・それ、全然面白くないから!
・あきれたおっさんはそれでも何とかニセ両親を用意し、感動の再会成功。スタックス氏は渋々アニーを手放す・・・というか、あんたケータイ会社で個人情報を掌握してる設定なんだからニセ親かどうか調査できるんじゃないの?そんな形見のペンダントが同じものだったとかという断片的なエビデンスだけで判断していいのかよ?というか、その両親、アニーを捨てた後ブラジルに出稼ぎに行って帰ってきた設定なんで、せめてパスポートの渡航歴を確認しろ!
・そしてSNSの有効活用でアニー奪還成功・・・ここがクライマックスなんですが、そこまるまるFacebookの宣伝よね?
・『アニー』といえば、圧倒的な人数のキャストによる盛大なダンスモブシーンが見ものなんですが、今回はそれが気持ちいいくらいない!最高人数がクライマックスの10名強!まだExileの方が人数多いわ!
・で、エンディングテーマはTomorrow。明らかにアニーではないオッサンのヘッタクソな裏声がエンドロールにかぶさってくるんですが・・・お前、平井堅やないか!?わざわざ字幕版観に来てる客になんでこいつの歌被せるねん、新種の嫌がらせか、これ!?
ということで、こんなもんこれっぽっちも『アニー』じゃねぇわ!という罵詈雑言でハチの巣になったものと思われますが、案の定2015年ゴールデンラズベリー賞の”最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞”を受賞されました、おめでとうございます。