「涙の数だけ強くなれるよ〜♪ ダメダメなところも含めて、全てが愛らしい陽キャ映画☀️」ANNIE アニー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
涙の数だけ強くなれるよ〜♪ ダメダメなところも含めて、全てが愛らしい陽キャ映画☀️
世界中で愛されているミュージカル「アニー」を実写映画化。
舞台は現代のニューヨーク。意地悪な里親ハニガンに育てられる10歳の少女アニーは、ある日偶然にも電気通信企業のCEOスタックスと出会う。市長選に出馬しているスタックスは票稼ぎのためアニーを里子として迎え入れるのだが、彼女との出会いが彼の心を変えていく…。
ニューヨーク市長選挙に出馬する大富豪、ウィリアム・スタックスを演じるのは『ドリームガールズ』『アメイジング・スパイダーマン2』の、オスター俳優ジェイミー・フォックス。
スタックスの秘書グレース・ファレルを演じるのは『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』『インターンシップ』の、名優ローズ・バーン。
アニーの里親、ミス・コリーン・ハニガンを演じるのは『マスク』『シュレック』シリーズのキャメロン・ディアス。
また、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『スチュアート・リトル』シリーズの、レジェンド俳優マイケル・J・フォックスが本人役でカメオ出演している。
製作を務めるのは『メン・イン・ブラック』シリーズや『アイ・アム・レジェンド』の、名優ウィル・スミス。
第35回 ゴールデンラズベリー賞において、最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞を受賞…🌀
トゥモロートゥモローアイラブヤトゥモロー〜♪という歌でお馴染みのミュージカル「アニー」。
テレビCMとかでいやというほど見たこのミュージカルだが、実は本編を観たことは一度もない。こういう「赤毛のアン」と「クリスマス・キャロル」をくっつけたみたいなお話だったんですね。へー。
このミュージカルの原作は1924年から2010年まで連載されていた新聞漫画「小さな孤児アニー」。余談だがWikipediaによると「アニー」のキャラクターはあの有名なハードボイルドアメコミ「ディック・トレイシー」(1931-)に時折登場するらしい。なにそれ読みたい。
この漫画を初めてミュージカル化したのが1976年。その翌年にはブロードウェイで公演が開始する。
日本版の初演は1978年。ブロードウェイの翌年とは凄いスピード感だ。この時ウォーバックス(本作ではスタックス)さんを演じたのはなんと若山富三郎というのだから驚く。なにそれめっちゃ観たい。
1986年、日テレの主催/製作により再度公演が始まる。この体制により、2024年現在に至るまで毎年の公演が続けられている。
「アニー」のミュージカルを映画化するのは、1982年(ジョン・ヒューストン監督)、1999年(ロブ・マーシャル監督:テレビ映画)に続きこれが3度目。とはいえ、1982年版には続編として『アニー2』(1995)というものが存在しているらしいし、1932年と1938年には原作漫画を映画化した作品が公開されている。探せばもっとあるかも知れない。
要するにこの「アニー」は手垢がつきまくっている作品な訳です。
普通に映画化しても二番煎じ三番煎じにしかならないと考えたのでしょう。舞台を1930年代から現代のニューヨークに、メインキャラクターの人種を白人から黒人に変更するという大胆な手が打たれています。
正直、これらの大きな改革をオリジナル版のファンがどう受け取ったのかはわからないが、少なくとも本作でしか「アニー」のことを知らない自分としては何の違和感もなくこの物語を受け入れる事が出来ました。
歌が上手けりゃ人種は関係無し!ジェイミー・フォックスの歌声が思っていたよりも甘くてセクシー♪流石レイ・チャールズを演じていただけの事はある!!
映像はかなり安っぽい。お金は掛かっているんだろうけどテレビドラマとかミュージックビデオみたいに見える。
また、物語の展開は性急かつユルユル。たった2週間とかそこらでトニー・スタークみたいな嫌な金持ちがあんな風に改心するかね?
特にクライマックスのグダグダ感というかやっつけ感は凄い。日本のコメディドラマ観てるみたいだった…。
とまぁ、映画の内容に関してはラジー賞を受賞してしまったのも納得のダメっぷり。いかにもヤングアダルト向けと言った作品でした。
しかし、この映画が嫌いかと言われるとそうでもない。…というか、正直言ってかなり好き!✨
本作の特徴は底抜けの明るさ。圧倒的な陽キャ感。
みなしごが意地悪な里親にいじめられながら、本物の両親が迎えに来てくれるのを信じて日々を懸命に生きている…。なんて、お話の筋だけ聞くと暗くて社会派な映画のように思われるが、この映画には悲壮感のカケラもない。基本的に120分ずっと躁状態。
ハニガン家での日々なんて、もっと暗いタッチで描いた方がストーリー的には絶対良いと思うのだがあえてそうしていない感じがする。同じ年頃の女の子が集まってワイワイやってるから普通に楽しそう。
暗さを徹底的に排除することにより生まれる多幸感。この過剰な多幸感こそが本作最大の魅力である。物語のダメさも、このハッピーさに押し切られてしまって特に気にならなかった。むしろこのダメさを心地良いとまで思えてしまう。これってすごい事ですよ!
この映画の多幸感は、ひとえに役者陣の好演あってのこと。とにかく皆んなかわいいんだ!
ハニガンさんを演じるのはキャメロン・ディアス。彼女の映画を久しぶりに観たけど、やっぱり良いなぁ〜っ😊絶対悪役とか出来ないだろこの人、と思いながら観てたらやっぱり出来ていなかった。いやしかしそこが良い!登場するだけで画面がパッと華やぐ。やっぱり彼女は最高のコメディエンヌだ〜〜!!
本作の出演を最後に女優業を引退したディアスだが、何と2024年公開予定のNetflix映画でカムバックする事が決まっている。やったー🙌
キャメロン・ディアスはもちろん魅力的なんだけど、今回の正ヒロインであるグレースを演じたローズ・バーンもとても良かった。これまではさほど彼女に魅力を感じていなかったのだが、何故か今回はとても素敵に感じた。この人こんなに綺麗だったっけ!?
そしてそんな魅力的な女優陣を上回るキュートさを見せたのがジェイミー・フォックス!
異常なまでに潔癖症。とっても嫌な金持ちなんだけど、何故かとっても愛らしい。こんなに強面なのに不思議。
『アバター』もどきの映画をアニーたちと鑑賞するシーンが可愛らしくて好き。斜に構えていながら結局誰よりものめり込んでしまうスタックスさんがキュートだったのよね〜♪
スタックスさんとグレースが画面のタッチパネルをキャッキャと操作するシーンとか、尊みが過ぎるっ!!
役者陣の好演もさることながら、作品内に所狭しと散りばめられたギャグの数々にも和まさせていただきました。
シニカルな笑いではなく、即物的かつくだらないギャグで笑いを取ろうとする本作。こういうのってあんまり乗れなかったりするんだけど、本作はとにかく明るいのでこのノー天気なギャグが妙に作品のトーンに合っており、所々声を上げて笑ってしまった。
スタックスさんがズラだった…。何その意味わからんギャグ!?
ひとりツイスターゲームに勤しむハニガンさんとか、馬鹿馬鹿しすぎて最高っ!🤣
ニューヨークの街並みがめちゃくちゃ魅力的に映し出されていたのも、この映画の美点。普段は映画を観ていて、その舞台となった街に行ってみたい!とかあんまり思わないんだけど、この映画を観ていると何故かめっちゃニューヨークに行ってみたくなるから不思議。
「街映画」というジャンルとして観ると、本作はかなりの傑作だと言って良いのではないでしょうか!
吹き替えのクオリティが高かったというのも、本作を楽しむ事が出来た要因の一つ。子役の女の子の吹き替えもバッチリで言う事なし。
中井和哉さんや大塚芳忠さん、本田貴子さんといったベテラン声優たちの安定感抜群のやり取りのおかげで映画の世界にどっぷりと浸かる事が出来た♪
この映画はダメなところも多いが、そこも含めて愛おしい。ただ、流石にこれはどうなの?と思ったのは通信企業が利用者のデータを用いてその居場所を特定しようとする展開。こういうのってかなり際どい行いだと思うのだが、そこを特に何の躊躇もなくやっちゃってるところには、流石に擁護しきれない無神経さを感じてしまった。
というか、結局アニーの本当の両親はどうなったのよ!?そこの件完全にぶん投げて終わってんじゃねーか!!
何はともあれ、この溢れ出る陽キャ感には完全に参りました。
本作の製作を務めるのはウィル・スミスとジェイ・Z。フレッシュ・プリンスとビヨンセの旦那がプロデュースしてんだからそりゃ明るくもなるわな☀️
ニューヨークを舞台にしたミュージカル映画といえばスピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)なんてのを観た事があるけど、それと比べれば断然本作の方が好み。やっぱ明るく楽しい方が良いよ〜ミュージカルは。
マイケル・J・フォックスの元気な姿を見る事が出来たし、なんかもう大満足です✨
※動物ボランティアの女性として、ミュージシャンのシーアがカメオ出演している…って。えっ?あの人がシーアだったの!?顔初めて見たぞ…。めっちゃ普通の人じゃん。
※※サカナという魚人が登場する劇中劇。この『アバター』もどきの映画のクレジットが流れる場面で、監督:ロード&ミラーと書いてあった。
ただのジョークでしょ、なんて思っていたのだが、調べてみてビックリ。マジでこの劇中劇は彼らが監督しているらしい。あんたら何やってんだよオイ!💦
そうなんですね、ラジー賞(ゴールデンラズベリー賞)取っちゃってたんだ。俺、けっこう好きなんだけどなあ。やっぱ観る目ないのかな…でも好きだからいいか。
若山富三郎、なるほど。当時って、バタくさい顔=外国人、って感覚があったような気がしますもんね。