劇場公開日 2014年11月14日

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「99%の平凡な人生への讃歌」6才のボクが、大人になるまで。 REXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.099%の平凡な人生への讃歌

2015年4月2日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

特筆すべきいかにも「映画的」なことは起こらない。 それなのに、まるで自分の人生のことかのようにのめり込んでいる。 原題はボーイフッド(少年時代)なのだが、多分40代以降の世代の方がグッとくるものがあるのでないだろうか。

劇中、メイソンの成長とともに「青春あるある」のオンパレードになるのだが、それよりも自分の年齢に近いから、母親のオリヴィア(パトリシア・ アークエット)の振り絞るセリフ「人生が短すぎる」が、最後に胸にズシンと響く。

孫に銃をプレゼントしたり高校卒業を祝うパーティを開いたりと、アメリカと日本では文化が違うところも多々あるが、メイソンの一家が織り成す生活は国を問わず普遍的なものばかりだ。

個人的に親が三回離婚しているので、メイソンやサマンサにすごく共感した。
自分ではどうしようもない環境の変化に「すごくムカつく」と叫ぶしかない子供の無力さ(笑)。

初めから繊細な感受性を持っているメイソンのイノセントさを、12年も表現し続けたコルトレーンは凄い。 一歩引いた目で家族を、社会を見つめ続け、でも決して誰を責めるわけでもない優しい男の子。悟ったような口ぶりもするが、その実自分の世界に入り込むことで安心感を得ている多感な状お年頃を、自然に演じていた。

成長するのは子供だけではない。 いつまでたっても子供のような夢を見ながら現実をごまかす実父のメイソンsr(イーサン・ホーク)に、共感する人も多いのではないだろうか。社会と折りあいをつけるのは、いつも女性の方が早い (笑)。

そんなイーサン・ホークの役どころはダメンズ一歩手前だったけど、子供たちと正面から向き合う姿は良かったなぁ。個人的には彼も助演男優賞もらってもいいと思ったよ。

160分は映画としてはとても長いのに、描かれていない部分をもっと見たい!という物足りなさも。特にオリヴィアが、どうしてダメンズばかり捕まえてしまうのか気になった(笑)
メイソンがラブラブだった彼女との破局までの道のりも気になる…
振り返れば最初は順調だった恋って、いつ歯車が狂ったのか不思議に思うことって、多いよねぇ…。

どんな人生を送っていても、誰にでも等しく時は流れる。
人生って滑稽で思い通りにいかなくて、いつも物足りなくて。きっとほとんどの人は自分の人生に不満足。
そんな平凡な大多数の人間への愛情あふれる映画。時間を共有しながら半生を追体験し、せつなくなりました。

REX