「12年の歳月がもたらすもの」6才のボクが、大人になるまで。 mrさんの映画レビュー(感想・評価)
12年の歳月がもたらすもの
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ビフォア・ミッドナイトのシリーズの監督が、同じ役者を使って撮影に12年の歳月を費やしたという映画。
自分のお気に入りは2つある。1つはラストの、さながらビフォア3部作を彷彿させる、メイソンとニコールが歩きながら会話しているシーンからエンドロールまで。
もう1つは、メイソンが母の下を離れて1人自分の入学する大学へと旅立つシーン。
前者は物語を通して監督が伝えたかったことが示される場面であり、それを観客に実感させる「仕掛け」も面白い。
対して後者は12年という歳月の重みを最も感じさせる一幕。殆ど女手1つで我が息子を育ててきた母が人生の喪失すら感じて流す涙、メイソンが乗る車についた幾つもの傷跡、そしてガソリンスタンドでカメラを構える彼の姿。
特にガソリンスタンドのシーンは凄まじい。そこだけ見れば何てことはない、ただ18歳の少年が写真を撮るだけのシーンなのだが。そこにあるのは彼が歩んできた12年間。12年という歳月が何気ないカットの1つ1つにここまで深みを与えるとは。
加えて、メイソンが周りの人々から少しずつ影響を受けている描写も良い。時の流れを感じさせるゲーム機やパソコン、歌謡曲の変遷については言わずもがな。
たしかに起承転結などといった言葉とは無縁の、劇と呼ぶにはあまりに退屈なプロットかもしれない。だが、だからこそこのプロットにはリアリティがある。真に人の心を揺さぶるのは、整理され計算された起承転結ではなく、洗練されたリアリティなのではないか。そのリアリティを支えるのが、役者たちがそれぞれの役に寄り添って生きてきた、まさにその12年という歳月なのだ。
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