「父母姉弟それぞれが「責任ある大人」に育つ過程」6才のボクが、大人になるまで。 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
父母姉弟それぞれが「責任ある大人」に育つ過程
サマンサとメイソン姉弟が、両親の離婚、母親の再婚、アル中継父からの脱却、母友人宅での生活、母親の復学と就職、母親の再再婚と離婚、父親の再婚、と親の様々なステージ変化の中で多くの人と出会い、成長していく。
ふたつ上の姉サマンサは最初から勉強が良く出来て社交的、上手く生き抜く力に長けている。
メイソンは幼い頃から、大人の思うコントロールしやすい子供らしさよりも、自分なりの気持ちや考えがしっかりあるが、それを大人に理解される難しさを子どものうちから経験済のため、いつしか写真など自分で表現した作品を通して考えを伝えることを好むようになった。
母親は子供達を養うため一生懸命努力しているが、その真面目さに反してなぜか連れてくる男をアル中に養成してしまう幸薄。
父親はどんな状態でも子ども達に会いに来る。アウトローに見る人もいるかもしれないが、真を突いた考えをしていて、人間としてはまとも。
ネイソンは父親に似たのかな?
継父がいる家庭を2度経験し、突然アル中DV夫から逃げ出し、母親の知り合いの家に泊めてもらったり、変化の多い生活をするが、危なっかしい局面で必ず父親がよく言って聞かせて守ってくれている。
母親の同僚や生徒達、転校先の先生達など、出会う様々な大人が、子ども達に「責任をもつ大人」に育つよう、向き合ってくれている。
そのお陰で、踏み外す可能性も多分にあったサマンサもメイソンも、無事大学進学まで成長できた。
12年の歳月をかけて同じ人間が成長過程を演じているため、とても自然に、
1人の人間の人格が形成されて社会性を覚え他者と出会いその影響を受けながら、ブレない自己を堅めて、思いやりのある大人に成長していく姿が描かれている。
そして、ネイソン本人よりも、23歳で学生授かり婚をした、父親と母親それぞれの責任ある大人への成長も感じられるのが役者さん達の演技力を感じる。
大学生活をどのように謳歌するかで、サマンサとネイソンそれぞれの人生はまた如何様にも開けて変わっていくし、大人になっても変わり続ける。
両親と同じように繰り返すのかしないのか。
写真という道を見つけたネイソンの人生をもっと見たいが、本作では、ただの年齢的な「大人」ではなく、「責任を取る大人」が育つまでを描いていたと思うので、サマンサもネイソンも立派に育ったから3時間半の長作がエンドロールを迎えたのだろう。
姉に続き、大学進学のために家を出ていくネイソンに、母は涙が溢れ出す。
2人の子を大学に送り出すまで、どんなに他の楽しみを犠牲にしてでも時間とお金を捻出してきたか。それは子供達を心から愛しているから。
2人の子供が無事育った安堵と達成感と共に、どっと生き甲斐が出ていく寂しさが押し寄せて、その先あとは自分の葬式くらいしかイベントがないと言い出す。
そこに「あと40年は生きる」と言うネイソン。
そう。育児を20年近く一生懸命したら、きっと母親は10年後には孫に会えているかもしれないし、育児を通して磨かれた愛情豊かな勤勉さで、生徒や他の人を育てる別の役割を得るだろう。
父親も、子供達の育児よりもただ子供達に楽しみを与える事しか考えられない存在から、本音を聞き出しサポートする、仕事に就いてお金を稼ぐ、やりたい仕事を得て新しい家庭も守る存在へと成長を遂げた。
家族って、父も母も子供達も成長していくんだなと見て思ったし、そこには愛が必要で、アルコールやDVに溺れて自身から逃げたら、人生からも他者からも切り捨てられる。
目で見て身をもって経験できたサマンサもネイソンも、人並み以上に理解ある大人になっていく予感しかしない。