劇場公開日 2014年11月14日

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「アーネスト、良かったね!」6才のボクが、大人になるまで。 Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アーネスト、良かったね!

2024年7月6日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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2014年公開、アメリカのホームドラマ。

監督・脚本:リチャード・リンクレイター

主なキャストは
メイソン・エヴァンス・Jr:エラー・コルトレーン
オリヴィア・エヴァンス:パトリシア・アークエット
メイソン・エヴァンス:イーサン・ホーク
サマンサ・エヴァンス:ローレライ・リンクレイター
※監督であるリチャード・リンクレイターの娘

アカデミー賞では、作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞の6部門にノミネートされたが、パトリシア・アークエットが助演女優賞を獲得したにとどまった。

原題は『Boyhood』、直訳すると、少年時代。

メイソンの6歳から18歳までを描いた作品だが、
とにかく驚くのは、実際に12年かけて撮影したことだ。
ホームドラマの長寿番組といえば、橋田壽賀子の『渡る世間は鬼ばかり』がすぐに思い出されるが、
本作は、12年にわたり撮影したものを166分に納めている。

12年間、おなじキャストで事故なく撮影完了。
それだけでもスゴイことだ。

6歳の男の子の視点を通じて、
離婚した実父との交流、義理の父との関係、
思春期以降の「セックス・酒・ドラッグ」との
関わりをさりげないテイストで描く。
マリファナなどの薬物が、普通のティーンエイジャーに普及していることが垣間見える。

一貫して、姉弟と実父との仲がずっと良い。
週末を利用して定期的な交流がずっと続いている。

誕生日のプレゼントは、元ビートルズメンバーのソロ曲を入れ『ブラック・アルバム』と名付けたオリジナル手作りCDだ。
ポール・マッカートニーが好きだと言う息子に対して、
「4人揃ってビートルズだ」と持論を語りだす父。
自分を見ているようだ(笑)…

いずれにしても、
素晴らしい父子関係だ。

実父を演じるイーサン・ホークがとても良い。
彼にしては抑制の効いた演技が印象的だ。

母親を演じるパトリシア・アークエットは、
『ロスト・ハイウェイ』の謎めいた ”レネエ” が有名だが、
本作では、一念発起、苦学して大学教授になる頑張り屋さんの母を演じていて、イーサン・ホークとは逆に少し押し出しの強い演技をしている。
主役と姉が、どちらかというと ”おとなしめ” なキャラクターなので、熱演ぶりが少し目立ちすぎる。

一番好きなシーンは、
メキシコ?系移民で配管工のアーネスト(残念ながら演者不明)のエピソードだ。

自宅の老朽化した配管を修理しに来た若い配管工に対して、少しでも安く済ませたい母は修理箇所をできるだけ少なくしようとネゴするが、
配管工は、踏んでも壊れない丈夫な配管で全体を修理する必要を説く。

母は、感心して「賢いわ、学校へ通えば?」と言うが、配管工はたどたどしい英語で「学校行きたい、でも難しい。一日中、仕事」と答える。
母は、「夜間の公立短大は? 授業料が安い」と返す。

映画のラスト近く(約3年経過している)、
母と子どもたちが立ち寄ったレストランの店長として、その配管工が再登場する。
アーネストだと名乗り、英語を学び短大で準学士号を取ったと話し、次のステップに進もうとしていると話す。
「あなたは人生の恩人だ」
「あなたにお礼が言いたかった、グラシアス」
「ランチくらいは奢らせてほしい」
直前までギスギスした会話をしていた子どもたちも、
誇らしく母を見て微笑む、というシーンだ。

不覚にも涙が出そうになった。

この映画のアイデア(企画)自体が満点だが、
ドキュメンタリーのように淡々と描く日常を、
「もう一度、166分見るか?」
自問自答した結果、☆3.5としたい。

Haihai