「市川崑版よりも訴えてくるものがあった」野火 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
市川崑版よりも訴えてくるものがあった
5日分の食料を持って出たため、部隊に戻ると、「せめて5日間入院してろ」などと言われ再び病院へ行くも、「肺病ごときにかまってられるか」と追い出される。食料は野戦病院で没収されたため、地元民から強奪したりもした。そして、また部隊と病院の往復・・・
廃教会で地元民の男女が現れるが、女の方を殺してしまった田村。さまよい続けて民家から塩を見つけ、やがて別の隊の日本兵4人と行動を共にする。「俺と一緒にいれば弾当たらないから」と言う伍長(中村達也)。敗戦濃厚のため、セブ島に輸送するためパロンポンに集合せよという命令が伝わっていたが、行軍中、一斉射撃の虐殺に遭ってしまう。死にかかった伍長は狂気に満ちていた。ニューギニアで人肉を食ったことがあるとか話していたが、「俺が死んだら、ここ食っていいぞ」などとうわ言のようにつぶやく。
一方、安田(リリー・フランキー)の命令でタバコとイモを交換させられていた永松(森)と再会するが、猿の肉だと食わされた干物。安田と永松は人を殺して人肉を食っていたのだ。永松はとうとう安田を殺すが、彼もまた狂気にかられていた・・・
累々と横たわるおびただしい死体の数。残虐な描写などは、戦争の激しさよりも、兵士の誰もがもう戦えなくなっていたことの方が心にガツンと訴えてくる。そして人肉問題。この描写があるかないかで戦争の悲惨さが・・・しかも正常な人間として生きていけない状態が見て取れる。
沢山の映画を観られてますね ✨
無事帰還した車椅子に乗った元兵士が、当時の事を語ろうとした時、嗚咽が止まらず話す事が出来ないまま詫びて背中を向けて去られたNHKの番組を思い出しました。体験した者のみが知る苦悩する姿でした。ムンとした湿気の多い亜熱帯を、いつ殺されるか分らない状況で空腹のまま彷徨う映像が蘇って来ました。
こころさん、コメントありがとうございます!
予算がなくてもここまでできる。
演技の面とか最高ではないのですが、監督の心意気が伝わってくる作品でした。深作欣二監督の『軍旗はためく下に』も似たようなエピソードでしたが、これもショッキングでした。
テレビ放映したのを数年前に観たのですが、飛んで来た肉片の生々しい音が、暫くの間耳から離れませんでした。思わず目を手で覆ってしまうような場面も有り、恐怖と不安に胸が苦しくなるような映像や音声の作品でした。