「地べた這い回り、忌まわしき戦争の記憶」野火 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
地べた這い回り、忌まわしき戦争の記憶
大岡昇平の同名小説を1959年に市川崑監督が映画化しているが、そちらは未見。
本作では、役者たちの血色がいいのは目をつむれば、緑濃密なジャングルでの飢餓と人間性が殺がれていく過程は凄まじい。
また、短いながらも繰り広げられる戦闘シーン(暗闇の中で数多の日本兵が撃ち殺されるのですが)は、非常に恐ろしい。
ビュンビュン鳴る銃声、轟く爆音、さらに『鉄男 TETSUO』を彷彿とさせる耳障りな音楽もあり、まさしく塚本晋也監督作品印が刻まれている。
機会あるごとに田村一等兵(塚本晋也)と出遭う安田(リリー・フランキー)と永松(森優作)も映画に深みを与えている。
末期的戦下でもタバコと食料と交換して生き延び、終いには年少の永松に「猿」を捕ってこさせて生き延びる安田には、戦下における人間性を感じてしまう。
(経済の象徴としてのタバコ、「猿」が殺され捌かれるところは直接見ないというヒエラルキー上位者のいやらしさ)
なので、レイテ島でのエピソードだけであれば「傑作」といってもいいが、巻末に奇跡的に帰還した田村のその後が描かれる。
あの地べた這い回り、「猿」まで食べた忌まわしき戦争の記憶が甦ってくる・・・
ここは蛇足ではありますまいか。
いや、違うのか。
戦後70年、あの忌まわしい出来事を、ひとびとは忘れてしまっているのではないか、と問いかけているのかもしれない。
むむむ、ちょっと評価が難しい。
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