「大好きな塚本晋也監督の新作。 上映開始後、割と早めに彼のトレードマ...」野火 saikimujinさんの映画レビュー(感想・評価)
大好きな塚本晋也監督の新作。 上映開始後、割と早めに彼のトレードマ...
大好きな塚本晋也監督の新作。
上映開始後、割と早めに彼のトレードマークである、手持ちカメラ、手ブレ、寄りの画、が見れる。あぁ、俺はいま塚本映画を観ている…という感じ。至福。
自主制作という事で、限られた予算の中で、安っぽくならないようにとても巧みに演出していた。
特に敵の爆撃シーンでは、敵の姿や爆撃機の姿は一切映る事なく描き切った。
この映画では敵の姿だけでなく、命令を下す人間なども描かれていない。
大岡昇平の原作通り、戦争を経験した兵隊の目線で描き切る。
監督は、美しい大自然の中で滑稽に四苦八苦する人間を描きたかった、という事なので、敵や上官が映らなかったのは、予算の関係だけでなく、コンセプト的にも正解だったろう。その構成は「ハウルの動く城」と同様である。あの映画も、戦争をしているとうの本人たちはほぼ出ずに戦争に巻き込まれる平民を主軸に描かれる。戦争する理由さえ謎のまま。
塚本晋也の特徴であるエグさも、屍体に出ていた。脳みそが飛びてた屍体や、その脳みそを踏んづけて走るシーンはトラウマ。また攻撃により右腕をもぎ取られた2人の兵隊が一つの腕を取り合うシーンは、プライベートライアンのブラシュアップバージョンといった感じでとても良かった。
僕の塚本晋也作品の好きな所、「ヘイズ」などに見られる、ブツブツ独り言を言ってる感じとか、好きなのだが、そういうのは割と少ない感じ。しかし、なんだか解らないが異様で恐い雰囲気。例えばヴィタールの血のない内臓や、ヘイズの一体何が起こってるのか解らない恐怖は、一体何のために戦争をしているのか、もはやそれすらもわからない、といった形で現れていた。
一見の価値は大アリの作品だと思う。